黒字化への道が遠いテック系企業
所在地にもよるが、状況の改善を期待するあいだ、旅行関連企業が何とか生き延びているのには、各国政府の新型コロナウイルス感染症に対応した支援プログラムの後押しもあった。
一方、決算に大穴を開けたテクノロジー系の大企業が新たな資金を得るためには、政府支援以外の手段に頼る必要があった。こちらは、革新的な企業が今後(多額の)利益を上げることをあてこんで、大きな賭けに出る投資家を頼りにするケースが多かった。
なかでも損失額が多額だったのは、中国のテクノロジー系巨大企業だ。動画共有プラットフォームの快手(Kuaishou)は、2021年に126億ドルあった売上とほぼ同額の損失を計上した。これに比べると、配車サービス大手の滴滴出行(DiDi)や、デリバリーサービス企業の美団(Meituan)の損失額は小さいが、それでも相当な額にのぼる。さらに、中国政府の規制強化が同国のテック系企業に追い打ちをかけ、黒字計上への道はますます厳しさを増している。
最後に、レガシー系の事業者を見てみよう。ここでは、フランスのIT企業アトス(Atos)、米国を本拠とするエネルギーインフラ企業シェニエール・エナジー(Cheniere Energy)、グルッポTIM(Gruppo TIM、旧称テレコム・イタリア)などが多額の損失を記録している。
こちらのカテゴリーでは、巨額の損失が生じた要因は、業界全体の環境ではなく、個々の企業の事情による場合が多い。アトスは、悲惨な結果に終わった決算の要因として、英国における、あるアウトソーシング契約にまつわる予想外の出費増や、プロジェクトの「ずれ込み」、顧客の事情によるプロジェクト延期や支払の遅延を挙げている。
グルッポTIMは、国内のグッドウィル(のれん)の減損や、多額の繰延税金資産の損金処理により、業績が落ち込んだとしている。そしてシェニエール・エナジーは、2021年に液化天然ガス(LNG)部門が好調だったにもかかわらず、決算は赤字となった。複数の業界筋によると、同社は液化ガスを固定価格で販売しているものの、天然ガスの仕入れ価格の変動に影響を受けており、2021年にガス価格が高騰したあおりで一時的に赤字に転落したという。