家庭の料理と社会のかかわり
次にコロナ禍における料理頻度の推移を見てみよう。世界全体としては、3年間で微増という程度で、数字としての大きな動きはなかった。
実はその理由が、中国の料理頻度の激減によるのだという。厳しいロックダウンによるフードデリバリーの増加や、解除後はレストランの利用の増加や引き続きのデリバリーの利用などで、大幅に料理頻度が減った。一方、諸外国は確実に増加の傾向をたどった。
配偶者に料理を作ってもらう機会が増えたかという設問を設けたところ、世界的には6ポイントの増加だった。残念ながら日本は男性の料理頻度は0.1回の上昇だが、女性は0.3回上昇しており、コロナ禍で家にいる時間が増えた分、女性の料理回数も増えている。しかしながら、世界的には、コロナ禍が仕事の在り方、生活の在り方を変えたことは間違いなく、日本においても一つのブレークスルーになってくれることを願う。
最後に、家庭で料理をすることの社会的な意味合いを見てみよう。料理と社会の相関関係を、クックパッドがまとめた「食の良循環マップ」がある。これを見ると、一人の人間(家族)が料理をするということが、実にさまざまな事象とつながっていくのがよくわかる。
単純に、料理を作ったから食べにおいでと人とわかち合う楽しさ、体の調子がよくなる健康志向、材料を無駄にせずにすむサステナブルな喜び、オーガニックな農産物を求めて生産者とつながる発見、など、さまざままな幸福感が見えてくる。もちろん食文化を守りつなぐということもあるだろう。
日々料理をすることによって、これほどに社会とかかわりができていくのかということは、驚くばかりである。これまで、なぜ家庭で料理をすることがよいことなのか、正しいのか、漠然とはわわかっていても、はっきりと明言できなかったが、これではっきりと理由づけられた。Z世代のこれからの行動で日本のジェンダーギャップも大きく変わってくるに違いない。伴侶どちらでも、「楽しいから料理する」と思えるようになればハッピーだ。
連載:シェフが繋ぐ食の未来
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