ビジネス

2022.05.31

ビジネスにも生きる「多様性体験」1日1ダイバーシティ


世界にはすでにさまざまな事例が実在する。目が見えない人の世界を体験する「Dialogue in the Dark」。真っ暗な空間に入って聴覚や触覚を頼りに公園や喫茶店などをめぐる体験。また、妊婦さんの大変さを体験する「妊婦体験」。「九州・山口ワーク・ライフ・バランス推進キャンペーン」の一環として山口県、宮崎県、佐賀県の知事が妊婦体験ジャケットを着けて、一日を過ごす。


知事が妊婦体験ジャケットで一日過ごす、「九州・山口ワーク・ライフ・バランス推進キャンペーン」。

そして、VRで疑似体験する「難民キャンプ」。ダボス会議で世界のリーダーたちがVRのヘッドセットを装着し、仮想現実で難民キャンプを体験……。「誰かの靴をはいて歩く」という慣用句が英語にあるように、その人の身になって1日歩き回ることは相手の立場や状況を理解するのにいちばんの近道かもしれない。

「1日1ダイバーシティ」体験が成功するためにはいくつかルールがある。最初に身近な人からヒントを得て一日体験するテーマを決めたら、その人なりのルールで一日過ごすこと。そのときルールに納得する必要はなく、とにかく行動することが大切。次に、周りの視線が冷たくても続けること。冷たい視線や困難はうまくいっている証拠だからだ。気づいた違和感や発見はすぐにメモしながら、体験を終えたあと、それを変えるためにどうしたらいいか考えること。最後に振り返りをすることで、インクルーシブな社会づくりにつながっていく。

「1日1ダイバーシティ」体験は、個人の意識変革のみならず、組織としてのチームビルディングやマネジメントなど、仕事面にも生きてくるはず。コミュニケーションや効率の向上、多様な意見やアイデアが生むポジティブなシナジーも期待できる。いま、世界中に点在するダイバーシティに関する問題を自ら体験することで、この先の顧客インサイトや社会変化への理解が深まり、商品やサービス開発にも役立つかもしれない。企業や行政のリーダー、そして部下をマネジメントするマネジャーのみなさんにもぜひ体験を試してほしい。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

キリーロバ・ナージャ
◎電通Bチーム世界の教育担当。クリエーティブ・ディレクター。ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダの各国の現地校で教育を受けた。その経験をもとにした絵本『ナージャの5つのがっこう』を出版。

文=キリーロバ・ナージャ イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.092 2022年月4号(2022/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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