セレーナ・ゴメスの事例から考える、ネットと心身の健康との関係

Selena Gomez(Getty Images)


精神障害の基礎疾患がある人は、特に注意が必要だ。

「ゴメスをはじめとする多くの人には、デジタルプラットフォームから離れたくなるような理由があるのだろう」とフィンクは続ける。

「双極性障害やうつ病、不安障害、摂食障害の少女は、ソーシャルメディア、特にインスタグラムのような画像ベースのプラットフォームに触れる機会が多いほど、気分が落ち込んだり、症状が悪化したりする危険因子がある」

また、学術誌『ランセット・チャイルド・アンド・アドレセント・ヘルス』によれば、少女にとって最もダメージが大きいのはサイバーいじめで、その次が睡眠不足、運動不足のようだ。

デリシも同意見だ。「サイバーいじめは、非常に現実的なリスクであり、青少年がソーシャルメディアに触れる機会が多いほど、サーバーいじめや危険な影響にさらされるリスクが高まる」

なぜ青少年のリスクが高いのか


青少年と成人のメンタルヘルスの違いは、つきつめると、脳の発達の違いだ。デリシによれば、思春期は、成人後の脳機能を左右する神経ネットワークが発達・成長する大切な時期だという。最も重要なのは、意思決定をつかさどる前頭前野であり、これが完全に発達するのは20代半ばだ。つまり青少年の脳は、理性的な部分が十分に発達していないということだ。青少年は情報の多くを、脳の感情的な部分である扁桃体で処理している。

ソーシャルメディアは決して悪者ではない


ここまで欠点を挙げてきたが、ソーシャルメディアには利点も多くある。まずは、デジタルプラットフォームのおかげで、さまざまな立場の人が「集う」ことが可能になった。また、デジタルプラットフォームは、「#MeToo」、「#EndFGM」、「#ThisIsOurLane」といった社会正義のための運動を後押ししてきた。「#StandUpForUkraine」、「#JustGiving」などの募金活動も、現実世界では知り合うことすらなかった人々による、バーチャルなコミュニティの活性化を促した。

メディアを切断することで、自分や他者とつながるには


心身の健康を取り戻すためには、ゴメスのように、ソーシャルメディアとPRを担当するチームをつくって、コンピューター使用時間を管理できるようにする必要はない。

もっと小さな一歩を着実に積み重ねれば、誰でも、健康的なつながりを実感できるようになる。若者への重要なメッセージは、十分な睡眠を取り、現実世界で友人とのつながりを維持することだ。また、運動は、体だけでなく心の健康にも役立つ。

翻訳=米井香織/ガリレオ

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