公共トイレに世界が注目。渋谷区「THE TOKYO TOILET」の今

左上から時計回りで、代々木深町小公園トイレ(坂茂)、東三丁目公衆トイレ(田村奈穂)、七号通り公園トイレ(佐藤カズー/ Disruption Lab Team)、神宮通公園トイレ(安藤忠雄)


公共トイレを気持ちよく長く利用してもらうためには、清掃や維持メンテナンスも重要だ。きれいに保つために通常の公共トイレよりも清掃回数を増やす工夫も施されている。また、月に一度、第三者機関に所属するトイレ診断士による診断を行い、清潔に保つための工夫と努力をかかさない。

特徴的なのは、清掃員がファッションデザイナーであるNIGO®︎氏がデザイン監修をしたユニフォーム着用していることだ。そうすることで、「清掃中に声を掛けていただく機会が増えた」「写真撮影をお願いされることがある」「飲み物の差し入れをいただく」など、利用者との交流も増えたという。

トイレが街の観光スポットに 


プロジェクトの本格的始動から約2年。大きな反響が国内外からあったという。海外では公共トイレは犯罪の温床となるケースも多く、有料化の傾向が一般的ななか、無料でここまで品質の高い公共トイレを設置していることに驚きの声があがっている。

国内からも多く問い合わせがあり、お隣の港区も今年度から「THE TOKYO TOILET」プロジェクトを参考にした公共トイレの設置を計画している。このように渋谷エリア外への波及も少しずつではあるが進んでいるようだ。

しかしながら、利用者についての課題も挙がっている。弁当の容器や飲んだ後の缶などのゴミがそのまま放置されたり、トイレが泥だらけになったり、ボヤ騒動が起きたりなど解決しなければいけない問題もある。きれいになった公共トイレを、皆で気持ちよく利用するところまで、まだルールが浸透しきれていないのだ。啓蒙活動は実施しているが、まだまだモラルの定着には時間がかかりそうだという。

とはいえ、このプロジェクトのいちばんの成果は、利用者にとって、公共トイレに対する考え方や利用シーンが大きく変化したことだろう。SNSでの発信はもちろん、「THE TOKYO TOILET」の公共トイレを巡る自主ツアーや、待ち合わせ場所としての活用など、トイレが街の観光スポットになっている。


恵比寿東公園トイレ、槇文彦設計

公共トイレは、外国人や観光客など地域外の人たちも多く利用する。このプロジェクトを通して「仕方がないから利用する」から「素敵だから行ってみたい」と思われる施設に公共トイレがなりつつある。残りの5つのトイレも今年度中にオープンの予定だという。「THE TOKYO TOILET」がモデルケースとなり、国内外問わず多くの地域へとこのような公共トイレが広がっていき、皆さんに利用されることを期待している。

連載:「遊び」で変わる地域とくらし
過去記事はこちら>>

文=内田有映 写真提供・取材協力=日本財団 撮影=永禮賢

ForbesBrandVoice

人気記事