新たに労組結成を決めたチェルシーの「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」は焙煎工場を併設する大型店で、100人近くのスタッフが働く。この工場の従業員らは、スターバックスの米国内の製造部門で働く従業員としては最初の労組メンバーになる可能性がある。
スターバックスで働き始めて9年になるレイ・キドは今回の投票について「職場をより民主的で公平にするために続けてきた努力が結実し、誇らしく思っています。コミュニティーはわたしの大切にしている価値観で、仲間たちと連帯できることに感謝し、喜んでいます」と語っている。
スターバックスでは昨年12月、ニューヨーク州バッファローの店舗で働く従業員たちが、同社の店舗では初となる労働組合の結成を投票で決めた。国際サービス従業員労働組合(SEIU)に所属する労働者連合に加わる。現状では、飲食業界で労働組合に加入している労働者は2%に満たない。バリスタらスタッフ側は、人手の確保や昇給、研修などで一段の助力を訴えている。
ニューヨーク市内のスターバックスではさらに3店舗が投票を計画している。もっとも、ニューヨーク市での動きは組合活動の高まりを示す最新の一例にすぎない。より大きく捉えると、労働条件の改善や賃金の引き上げ、敬意や尊厳、評価を求める新たな労働者革命が起きつつあるようにも見える。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)は、人々に人生でやりたいことを再考させるきっかけになった。周りの人が次々に病に倒れ、亡くなっていくのを見て、労働に見合った対価が支払われていない、自分がまっとうに扱われていないと感じている人は、いまの仕事を辞めるようになった。嫌な上司や先行きの暗い仕事に耐えながら生きていくには、人生は短すぎるからだ。こうして、もっと意義ややりがいを感じられたり、キャリアアップにつながったりしそうな機会を求めて、何百万人もの米国人が離職する「大離職時代」を迎えることになった。
ラトガース大学のレベッカ・ギバン准教授(労働研究)はスターバックスの労組結成について、飲食店で労組をつくるのは「簡単ではないが実際にできる」ということを労働者たちに示してみせたと述べ、今後、労働者組織化の動きはさらに増えそうだと予想している。
スターバックス側は声明で、労組結成を決めた店舗について「全米各地の店舗でいつもしているように、パートナー(従業員)の声に耳を傾け、そこから学んでいく」と述べている。