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2022.04.02

独占取材、LVMHの御曹司が「NFTのインサイダー取引」の疑い

Getty Images

2月上旬のある日、世界第3位の富豪のLVMH会長のベルナール・アルノーの29歳の息子、アレクサンドル・アルノーは、NFTのマーケットプレイスOpenSeaにログインした。彼の目当てはHypeBearと呼ばれるカラフルなクマのアートで、その中の9021番のNFTに3100ドルの入札を行った。

9021番は1万点の画像コレクションの中で最も希少で、したがって最も価値のあるものの1つだ。しかし、不思議なことにアルノーが入札を行ったのは、個々のクマがどんな姿をしているのかを誰も知らないはずの時期で、LVMHの御曹司であり、ティファニーの重役でもある若きアルノーは、理論上はランダムに入札していたことになる。

アルノーは9021番を手に入れることに執念を燃やし、その日販売されていた他の未公開のHypeBearの価格より32%高い価格で入札し、落札した。また、7777番にも58%高い値段で入札した。その2日後、1万体のクマの詳細が明らかになったとき、アルノーは3体の希少なNFTを手に入れていた。

彼はその後、9021番を1万4700ドルで売却し、1万1600ドルの利益を得た。さらに、7777番の売却からも約9000ドルの利益を得た。

このときのアルノーの入札が、当てすっぽうで行われたものだとしたら、いったいどれほどの確率で彼は当たりくじを引いたのだろう。NFT市場の透明化を目指すスタートアップ、コンベックス・ラボ(Convex Labs)は、その確率を44万分の1と試算している。ちなみに、人間が雷に打たれる確率は生涯で約1万5000分の1だ。

この取引には、彼が管理していると思われる複数の暗号通貨アカウントが使用されていた。アルノーの広報担当者は、彼が内部情報を持っていたことを断固否定したが、フォーブスの具体的な質問には回答を拒否した。

違法性を問えないインサイダー取引


仮にHypeBearsが株式だとしたら、公開前の取引は、SEC(米証券取引委員会)の規制対象となる。しかし、規制がほとんどない暗号通貨やNFTの世界にはインサイダー取引を匂わせるような行為が横行しているが、明確な違法性はない。

アルノーは、どのNFTが最もレアなのかを、どうやって知ったのだろう。HypeBearsのプロジェクトは、シンガポールを拠点とする26歳の起業家のアーネスト・シオウ(Ernest Siow)が立ち上げた。

HypeBearsが公開された2月10日、シオウは彼とアルノーがビデオ通話をしているスクリーンショットを添えて「さあ、ベアをチェックしよう」とツイートし、アルノーもそれをリツイートしていた。

編集=上田裕資

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