ウクライナ侵攻、ロシア経済への影響は10年以上に

ロシアのプーチン大統領(Getty Images)

ロシアのウクライナ侵攻は世界経済に長期的な悪影響を与えるだろう。特にロシアは10年以上にわたり深刻な影響を受け、欧州にもそれより小さい影響が10年ほど及ぶ。米国などその他の国の経済は、さらに小さな影響を受ける。

この予測の前提として、核戦争が起きないことがある。核戦争となれば、事態は大幅に悪化するだろう。これはあくまで推測であり、私は経済学者なので戦争の結果は予測できない。

ロシアは今後10年以上、国際社会の「のけ者」になるだろう。ロシアとウクライナの間で協定が結ばれれば、各国が科した制裁の大半は解除されるだろうが、それでも一部は残る可能性がある。より重大な影響として、欧米の企業は今後、合法であってもロシアのプロジェクトや合弁企業に投資しなくなるだろう。バルト3国やロシアの南側国境付近などで新たに紛争が起きる恐れから、長期的な契約を避けるようになるはずだ。

欧米からの技術投資がなければ、ロシアの原油生産は悪化の一途をたどる。ロシアは多くの国と同様、採掘しやすい場所から先に原油をくみ上げてきた。そのため、今後の油田開発で最も有望なのはシベリアなどの環境が厳しい地域か、シェール油層だ。どちらも、ロシア国内の技術のみではまかなえない。欧米との合弁事業なしでは、原油生産は今後減少するだろう。

ロシアの製造業者も、車や機械など複雑な機材の部品の供給元として、欧米企業から避けられるようになるだろう。欧米企業は、再び紛争が起きてサプライチェーンが途切れることを危惧し、「そもそもロシアの必要があるだろうか?」と考えるのだ。

ロシア国内では、国内市場向け企業が海外の商品やサービスに頼れなくなり、費用が高く選択肢の少ない国産品やサービスを利用するようになる。この問題は、経済の末端まで広まるだろう。

例えば小規模農家にとって、将来的に修理部品を入手できなくなるかもしれない米ジョン・ディア製のトラクターを買うことは賢い選択ではなくなる。さらにロシア製トラクターの多くは、米カミンズや独メルセデス製のエンジンを使っている。こうした問題は、ロシア各地の小企業が使うコンピューターや機械でも生じる。

ロシアの農業は比較的安全だろうが、国の経済は全体的に弱体化し、今後10年以上にわたり貧困化が進むはずだ。
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編集=遠藤宗生

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