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2022.03.28 16:30

Sansanの経営と両立して本気で挑む「里山のスタンフォード」設立

SHIRO代表取締役会長の今井浩恵(左)とSansan代表取締役社長の寺田親弘(右)

SHIRO代表取締役会長の今井浩恵(左)とSansan代表取締役社長の寺田親弘(右)

発売中の「Forbes JAPAN」2022年5月号の特集「これからの『お金の使い方』」では、コロナ禍をはじめ大きな社会的役割を果たしたビル&メリンダ・ゲイツ財団、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブをはじめとした、世界および日本の起業家たちが取り組みはじめている「新しいフィランソロピー」の動きを取り上げている。

慈善活動だけでなく、多様な資金提供と活動を駆使して社会的インパクトの実現を目指す「フィランソロピー3.0」と呼ばれている動きだ。この起業家、経営者たちによる新しいフィランソロピーの動きを通して「新しい社会のつくりかた」の進化を見ていく。

寺田親弘がSansanの経営と両立して全力で取り組むのが、里山にスタンフォードをつくるとはじめた「神山まるごと高専」プロジェクトだ。


「必要な金額は文科省のレギュレーションで決まっていて、寮などを合わせると約21億円。今回はそれを超える24億円を集められた。手ごたえを感じています」

Sansan代表取締役社長の寺田親弘(写真右)は、理事長(予定)を務める「神山まるごと高専」(仮称)の開校資金について明かした。

寺田が徳島県神山町に高専を設立しようと動き始めたのは2015年。Sansanが神山にサテライトオフィスを置いた縁で地域とのつながりが生まれ、ビジネスと違う軸で社会貢献しようと、「テクノロジー×デザイン×起業家精神」をコンセプトとした高専の開校を目指した。

開校資金のうち5億円は寺田個人が出した。当初はきっかけになるお金を出して、あとは人に委ねるつもりだった。しかし、理事長就任を頼んだCRAZY WEDDING創業者の山川咲から「自分で理事長をやるべき。でなければ白紙に戻したほうがいい」と覚悟を問われ、自ら任に就いた。

理事長の仕事のひとつが寄付集めだ。寺田は神山町の協力を得て、学校設立資金の寄付を「企業版ふるさと納税」の適用対象にしてもらった。クラウドファンディングでも1611人が支援をしてくれた。その結果、計画を上回る資金が集まり、21年10月に認可申請を申請。認可が下りれば、23年4月に開校予定だ。順風満帆に見えるが、もちろんそうではない。

「Sansanでも資金調達やプロダクト営業でお金を出してもらっていました。そのときは『この製品を使って売り上げを上げましょう』とアピールできた。しかし、寄付は『利益が出る』とは言えない。共感しか応援していただく理由がなくて」

ただ、共感をベースにしているからこそ引き寄せられる人もいる。企業版ふるさと納税を利用して寄付をしたSHIRO(シロ)代表取締役会長の今井浩恵(写真左)は、そのひとりだ。今井は初めて寺田からプレゼンを受けたときの様子を覚えている。

「移動中、路肩に車を止めてオンラインでプレゼンしてくれたんです。寺田さんは『すいません』と言ってたけど、この人は移動の時間もフルに使うくらい、このプロジェクトに本気なんだなと」
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文=村上敬 写真=ヤン・ブース

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