松田:櫻田さんや楢崎さんをはじめとしたSOMPOの経営陣は、社員に時間がかかるプロジェクトでの成功体験を味わってほしいとも考えていたのだと思います。この合弁プロジェクトは6カ月程度ではなく、3年以上も要するものでした。当社はSOMPOの投資事業を2016年から支援していたのです。スピードは決定的に重要です。ただ、あまりにも多くの人が、「イノベーションとはきらびやかなもの」だと考えていますが、実際には泥臭いものなのです。SOMPOとパランティアの合弁事業も、櫻田さんや楢崎さんのリーダーシップのもと、プロジェクトチームの地道な取り組みがあって初めて目に見える結果が出たのです。
こうした成功を繰り返すうちに、好循環が生まれるようになります。イノベーションには、リーダーシップと、長期的な視点に立った取り組みが重要です。あまりにも短い時間でイノベーションを起こそうと考える日本企業が多いのですが、SOMPOとパランティアの合弁事業から学べることもあるのではないでしょうか。
牧:イノベーションはリーダーシップによるところが大きく、システムというよりも属人的という印象も受けます。仮に優れたリーダーが去った後も、イノベーションとは持続できるものなのでしょうか?
ウィックハム:とても興味深い質問ですね。例えば、アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズほどカリスマ的なリーダーの場合、同じ資質の人を見つけることは不可能です。しかし、きちんと企業文化を育て、その企業文化を守れるリーダーに経営を引き継げたならば、イノベーションを持続することは充分に可能でしょう。
カリスマCEOとして名高かったアップルのスティーブ・ジョブズ前CEO。 Getty Images
牧:SOMPOは新しいことに挑戦し続ける姿勢をもっているので、私はSOMPOを日本の企業社会における「変革者」と理解しています。Sozo VenturesはSOMPO以外にもLimited Partner(以下LP)を抱えており、どこもイノベーションに前向きに思えます。こうしたLPに共通した特徴はありますか?
ウィックハム:大企業にとってはベンチャー投資をすること自体が大きなリスクなのです。企業規模からすれば出資額はさして問題ではないと思いますが、出資することで信用を付与するという事実が大きな意味をもちます。そういう観点から言えば、ベンチャー投資を行なっているというだけで比較的、イノベーティブな会社と言えるのではないでしょうか。
Sozo Venturesの仕事は、大企業内に必ず一定数は存在する、問題解決やイノベーションに意欲的な経営者や中間管理職を見つけることです。あとは、経営陣全体の中でイノベーションがどの程度の重要性を占めているかにもよります。SOMPOは理想的な例ですね。サントリーホールディングスの新浪剛史CEOも、同様です。だからこそ、リーダーシップはとても大切だといえます。