ドイツ工場の課題は「水」の確保
EVのバッテリーに必要なリチウム、コバルト、ニッケルなどの原材料の需要はここ1年で急増し、ニッケルの価格はロシアからの供給懸念から異例の高騰となっている。EVのトップメーカーであるテスラが最近、米国と中国での車両価格を引き上げたのは、同社がその影響を直接受けるためと考えられる。
現在のモデルYの価格は、税引き前で約6万2000ドルで、販売台数の少ないプレミアム市場にとどまりそうだ。マスクは以前、テスラが今後、より安価なリン酸鉄リチウム電池を搭載した車両を投入する計画だと述べていた。
調査会社S&P Global Mobilityは先週、ウクライナ戦争の経済的影響がドイツとテスラだけにとどまらず、世界の自動車生産に影響を与える可能性があると述べた。今年の世界全体の自動車生産台数は8160万台と、S&Pの以前の予想の8420万台から減少する可能性があり、減少の大部分は欧州で発生する見通しという。
ドイツ銀行の株式アナリスト、エマニュエル・ロズナーによると、材料の不足は時間とともに緩和される可能性があるものの、ギガベルリンにとっては水がより長期的な懸念事項だという。「テスラが本格的に生産台数を伸ばすためには、適切な水の使用と大気汚染の防止策を当局に証明する必要がある」と彼は述べている。
テスラは年間生産量を50万台まで拡大するために必要な水にアクセスできるが、「将来的に生産量を拡大するためには、追加の採水許可が必要になる」という。
それでも、規制が厳しく官僚主義的なドイツで工場を開設できたことは、テスラにとって大きな成果だと、欧州の自動車市場に詳しいコンサルタント会社を経営するマティアス・シュミットは指摘する。
「工場の開設が予定より1年遅れたとしても、ドイツの標準的なペースからすれば素晴らしいことだ。ドイツ企業のオフィスでは、いまだに時代遅れのFAXが使われている」とシュミットは語った。