3つ目の理由は言うまでもなく、エアロパーツやエンジンなどを改造しやすいこと。4つめは90年代後半から徐々に人気が出てきたドリフト現象のおかげだと言える。1994年に英国BBC放送の人気番組「トップギア」で初めて海外に「ドリフト」を紹介してブームになり、各国でドリフト大会ができるほどだった。
5つ目には、1997年に登場したドライビング・シミュレーター・ゲーム「グランツーリスモ」の影響力も関係している。累積販売枚数が8000万枚を超えるこのゲームでは、多くの若いゲーマーは、それまでに日本からほとんど出たことがなかった日産スカイラインGT-Rの凄い走りなどを目の当たりにした。
それが次の理由につながる。やはり、日本車の大きなセールスポイントはコストが手頃なのに、走りが楽しいし、4WDやターボが多く搭載されて技術的に優れていること。また、日本車は作りが良いし、故障しないことですでに有名だった。そして最後の理由は、ここまでの20年間、日本というブランドが日本製のカメラ、ゲーム、テレビなどの信頼性や手頃な価格が深く影響していること。
さて、そう言うふうに人気が高まった日本車が実際にどこでどんな価格で売られているのだろうか? ここ数年、サザビーズやバレット・ジャクソンという競売会社が行ったオークションで、数千万円から数億円まで落札されている。
1億3000万円の値がついたトヨタ2000GT
トヨタ2000GTは、日本初のスーパーカーであることは認められている。海外コレクターが興味を示した最初の日本車だったし、それに、1967年の映画「007は二度死ぬ」に登場した初の日本のスポーツカーだった。1960年代後半に登場したマツダ・コスモや日産フェアレディZ(240Z)は割と早いうちにコレクターが興味を示した日本車だったけど、21世紀までコレクター界はそれ以外の日本車にはほとんど関心がなかったと言っても過言ではない。
2019年は特別だった。その年に豊田章男社長の直筆サイン入りのGRスープラ「グローバル#1」という第一号車が、アリゾナ州で開催されたバレット・ジャクソン・チャリティオークションに登場して、何と2億3000万円で落札された。
オークションの様子。写真右に豊田社長がスープラのエンジンカバーに書いたサインが見える。
スープラがデビューした当時の価格はおよそ600万円だったけど、2億5000万円の収益の全額はアメリカ心臓協会と9.11以後の任務中に死亡・負傷した軍人とその家族を支える財団に寄付された。
その他に、2021年式レクサスLC500コンバーチブルが2億4千万円、ルマン優勝のマツダ767Bが2億円、アキュラNSXが1億4千万円、トヨタ2000GTが1億3千万円、レクサスLFAが1億円、日産フェアレディZが9500万円、スバル・インプレッサ22Bが2700万円、三菱ランエボのトミーマキネン仕様が2200万円など、高値を獲得している。
それだけの価値がつけられる一つの理由は、そのクルマが出た当時、アメリカに輸入されていなかったと言うこと。また、不思議なことに、スズキ・カプチーノ、スバル360、ホンダ・ビート、トヨタ・センチュリー、日産パオ、ホンダS800、マツダRX2、トヨタ・スターレットなどもその25年ルールのもとで、海を渡っている。
ジャパニーズ・クラシック・カーショーの元気な参加状況や、日本車の上昇する価格を見ている限り、これからも、新旧の日本車の人気がさらに上昇すると思われる。次に人気が出る日本車は何だろう。元々アメリカに輸入されなかった1998年式スバル・レガシィB4ツインターボが来年、25年ルールに適応されるので、関心はグーンと出るのでは?