ビジネス

2022.03.03

豊田大輔が考える未来のチームづくり。愛氣道に学んだ「争わず導く技」

ウーブン・プラネット・ホールディングスSVP、ウーブン・アルファ代表取締役の豊田大輔

ウーブン・シティ第2のキーパーソンは、33歳のシニア・バイス・プレジデントである。これまでメディア露出の少なかった豊田大輔が、自身の原点と思い描く組織像を明かす。


──オフィスのエントランスに「モビリティ・フォー・オール」と掲げていました。

トヨタは「自動車会社からモビリティカンパニーになる」と宣言しました。モビリティの語源、Moveには「移動する」のほか「心が動く、感動する」という意味がある。モビリティカンパニーとして「人の心と心をつなぐモノやサービス」を提供するため、より広いスコープのモビリティが必要になります。

──だから、トヨタ自動車以外の外部から多くの人材を招いている。

ビジョンやミッション、思いが共有できると、大勢が集まります。そんな場にはガチガチのルールを当てはめず、目指す方向性を明確にして、みんなが裁量をもってやれる多様性が大切です。

ウーブン・シティでも、その土地の固有の文化なり、やり方に合わせて、地元の方々と一緒になってつくっていく、そうした多様性を敬う姿勢が不可欠です。

──ところで、よく「先味」「中味」「後味」というたとえを使われるのは?

自分が免許を取り立てのとき、クルマのイロハを教えてくれたトヨタのテストドライバー、成瀬 弘さん(2010年没)に学んだ言葉です。調理師免許もあった成瀬さんは、クルマづくりを料理の味付けにたとえました。「美味しそう」と伝わるのが先味、食べてみて「美味しい」のが中味、食べ終わった後に「また食べたい」という余韻が後味。これは料理やクルマだけでなく、会社や街づくりにも当てはまります。味は、進化し続ける必要がある。その人にパーソナライズして100点の味に近づけなければなりません。

自分がトヨタに入った理由のひとつは「成瀬さんがつくりたかったクルマがもっとあったろう、それを成瀬さんの弟子の方々と一緒につくりたい」という思いでした。

──ウーブン・プラネットとトヨタという組織は、どこが異なりますか?

1年ほどの在籍でTRI-ADへ移ったので、トヨタについて語るのもおこがましいのですが、よいところも、よくないところもあると感じます。
TPS(トヨタ生産方式)やトヨタのビジネスプラクティス(問題解決手法)の8ステップを学ぶと確かに鍛えられます。それも大事ですが、守るだけでは武道や茶道などでいう「守破離」のうち「守」で終わってしまう。

型をどう打破するかが、これからトヨタが取り組むチャレンジです。既存アセット(無形資産)をクルマづくり以外のフィールドに適用したらどうなるか。

ウーブン・プラネットには「守」に収まらない人たちに来てもらっています。まだ大きな成功を収めてないような人たちのほうが、「破」や「離」にトライできるエネルギーがあるからです。
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文=神吉弘邦 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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