東京のような都心部と、地方との考え方の差も大きい。例えば地方に住む筆者の同級生の女性は、周りの人の仕事や家族に対する考え方が古くて、唖然とする事が多いという。土地によっては、「家事代行もベビーシッターも口に出すこともできない」という雰囲気があるそうだ。
今もなお女性への負担は、非常に大きなものであると感じる。
轟社長の目標は、「誰もが生き生きと人生の選択ができ、Well-Beingが高レベルで実現する世界をつくること」だそうだ。そのためには“選択肢”と“自由”が必要だと強調する。
「多様な質の良い選択肢と、そこから自らが選び取ることができる自由が必要です。偏見や“○○せねばならない”などの“神話”が解消されることで、確実に社会は変わります」
新たに「不妊予防」にも挑戦
この轟社長の「〇〇するべき」を越える挑戦は、次のステップへと進んでいる。2021年6月にポピンズは、セルフチェックや卵子凍結など不妊予防を啓発する事業を新しくスタートした。
5組に1組のカップルが不妊治療を受けている現在。2019年には、16人に1人の子どもが体外受精で生まれている。また、不妊治療経験者の女性のうち、約4人に1人もの女性が、離職を余儀なくされているという現状もある。
「女性の場合、20〜30代のキャリアアップに重要な時期と、自然妊娠の可能性が高い時期が重なります。一生懸命働いてキャリアアップして、気づけば自然妊娠が難しくなっていた……という事例も多いんです。ポピンズは、働く女性の支援をミッションに置き、出産後の女性を切れ目なく支えてきましたので、不妊予防の領域へ踏み込むことは、ごく自然の流れでした」
轟社長は、成功体験にしがみつかないのか。それともまだ成功と思ったこともないのか。社会課題解決への取り組みを通して女性たちの生活を向上させ、人生を豊かにさせたいという思いは止まらない。
話を聞いていると、その声には、固定概念を“壊す”、もしくは“殺す“力がみなぎることに気づく。古い考えや過去の成功に縛られるのではなく、とにかく壊すことが大切なのだろう。
筆者も最近、「通常は……」「常識的に考えて……」「以前は……」という言葉を口にした瞬間、自分で「だめだ」と反省することが多い。
筆者はテレビ番組の放送作家でもあるが、コントを書けば専業主婦的なお母さんを描いてしまうし、企画でもステレオタイプのサザエさん的な家庭像を描いてしまいがちだ。以前から日本社会に根付く母親像、OL像を描き、女子アナ、美人CAなどという女性蔑視用語を使ってしまいそうにもなる。
本当は子どもをあやすのは母親ではなく父親でもいいはずだということもわかっている。それほどに、自分の中にある固定概念を変えることは難しいのだ。
僕も古い考えや過去の成功に縛らないように、それらを殺さねばならなくなってきているのだろう。