ビジネス

2022.03.04 12:00

誰が「古い考え」を殺すのか? ポピンズの静かなる闘志


なぜ「SDGs上場」が実現したのか


では、なぜこのタイミングで上場することになったのだろうか。轟社長は、これまでの経緯をこう語る。
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「以前にも上場を考えた時期はありましたが、我々は一度も赤字決算をしたことがなく、女性活躍推進に関する取り組みも評価いただき、銀行さまから融資をいただけていたので、上場には至っていませんでした」

しかし、2015年にSDGsが策定されて以降、その考えが少しずつ変わってきたという。


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「SDGsのゴール5に『ジェンダー平等を実現しよう』が盛り込まれて、社会的にも今まで以上に女性の活躍推進が叫ばれるようになりました。でもまだまだ行政の支援は不十分だと強く感じています。そこで、今こそポピンズが一歩前に出ていく必要があるのではないかと考えました。上場をして、 “社会課題解決”という使命を果たしていこうと思ったんです」

元々、上場企業並みに透明性や結果へのこだわりを持って事業運営を行ってきた同社。上場に際して、大きな経営方針の変化があるわけではないという。

「ファミリービジネスから“公器”へと変化したことで、投資家の皆さまへの説明責任が新たに生じました。もちろんコロナの影響を受けることもありましたが、幸い、長期目線で見て応援してくださる投資家さまが多くいらっしゃいますので、引き続き透明性の高い経営を続けていきます」

では、「SDGs上場」となったことについては、どう考えているのか。

「SDGsが世界的に浸透してきたことや、当社のミッションや事業内容が合致していることから、SDGs-IPOを決意しました。自ら主張するのみでなく、第三者からも評価を得た上での上場である点もポイントです。結果として日本初のSDGs上場となり、その文脈でたくさんのメディアからも取材いただいたことは大変ありがたいことでした」

まだまだ「べき論」がたくさんある


今でこそ、SDGsという枠組みの中で表現されているが、ポピンズは34年ずっと女性活躍推進に取り組んできた。特に、一貫して重視してきたのは「選択肢を増やすこと」である。轟社長は、それこそがバイアスの根絶につながると考えている。

この国にはまだまだ「べき論」がたくさんある。「子どもが3歳になるまでは母親がそばでみて育てるべき」「家事や育児に支障が出るほどまでに女性は働くべきではない」など。誰かが勝手に作り、社会に浸透した固定概念である。

すでに女性の就業率は70%を超え、夫婦共働き家庭がマジョリティになっているにもかかわらず、育児や家事はいまだに“女性の仕事”という意識が根強いのだ。

「メディアや我々の親世代の発言などあらゆる場所でアンコンシャスバイアスが植え付けられてしまうからです。また、アウトソースに頼ることを“甘え”や“怠惰”、“富裕層のための特別なもの”のように考える風潮も、まだまだ根強いですね」

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文=野呂エイシロウ 写真=ポピンズ提供

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