経済・社会

2022.02.28 20:00

追い詰められたプーチンは今、何を狙う? 運命の岐路にさしかかるウクライナ


松村氏はロシア軍の今後の動きについて「市街戦で殲滅戦を目指さず、ゼレンスキー大統領らウクライナ指導部関係者の拘束を目指すだろう。同時に議会や政府機関、放送局などを占拠しようとするのではないか」と語る。

松村氏は2020年10月に発表した著書『新しい軍隊』(内外出版)で、戦争の目的が「相手軍隊を打ち破っての領土の占領」ではなく、サイバーや電磁波なども使って自分たちの政策を強制する時代になっていると指摘した。ロシアも今回、ウクライナを自分の意のままに操ることができる国家にしたい思惑があるだろう。ただ、国際社会でここまでロシアに対する感情が悪化した今、傀儡政権を樹立しても、長期にわたって政権を維持できそうもない。ソ連がかつてアフガニスタンで打ち立てたカルマル政権のようになってしまうかもしれない。松村氏は「ロシアとしては、ゼレンスキー氏に圧力をかけて、ウクライナの中立化などを認めさせた方が良いと考えるはずだ」とも語る。

ウクライナは当初、ベラルーシで停戦協議を行いたいとしたロシアの提案を拒否した。松村氏は「ウクライナ側が、ロシアとその友好国であるベラルーシによる拘束の危険を感じたからだろう」と語る。英タイムズ紙によれば、ゼレンスキー大統領は、米国から避難を勧められたと認める一方、「私に必要なのは弾薬で、移動手段ではない」と語ったという。松村氏は「キエフにはCIA(米中央情報局)などの要員も残っているかもしれない。ゼレンスキー氏の身辺の安全を確保するため、支援しているのではないか」と語る。米国はアフガニスタンでカルザイ大統領の擁立や身辺保護を行うなど、Covert operations(秘密工作)の能力にも抜きんでている。
 
ウクライナとロシアは、ウクライナ・ベラルーシ国境地帯で、現地時間の28日に停戦協議をはじめた。日本時間3月1日午前零時からは、国連総会の緊急特別会合も開かれる。米国などは、ロシアに対する非難決議を目指す。数日間行われる見通しの会合でロシア非難決議が採択されれば、ロシアに対する国際世論がより厳しさを増すのは確実だ。プーチン大統領がウクライナとの交渉と同時に、核兵器の使用をちらつかせ始めたのも、時間が経過するほどロシアに不利な状況になると考えたからだろう。今から数日間が、キエフに立てこもるゼレンスキー大統領たちの踏ん張りどころになりそうだ。

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文=牧野愛博

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