経済・社会

2022.03.01 07:00

藻類や海洋生物にCO2を吸着させる「ブルーカーボン」事業、神戸市が推進


淡水域でもブルーカーボン実証事業を


日本では、ときおり水道水のカビ臭が問題となる。この原因は水源となるダムなどで生息するアナベナというプランクトンだ。

神戸市水道局は、アナベナを分解する微生物が、金魚などの飼育に使われる日本在来種のササバモという藻に大量に生息していることを発見した。研究室内での繁殖実験を経て、2018年から神戸市内の水源地の1つである烏原(からすはら)貯水池で、ササバモを植える実証実験を続けている。

海洋でなく淡水域ではあるが、これもブルーカーボンの増加につながる。ササバモの定着に取り組んだのは、実は水道局の職員だけではなく、関西学院大学社会学部の松村准教授に中心に、同大学の学生たちによる学生団体「Re.colab(リコラボ)KOBE」が参加している。

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烏原(からすはら)貯水池でササバモを植える大学生ら

神戸市は、このササバモを、水草が育っていない市内の他の池に移植したときの水質や生態の変化、CO2の吸着効果を解析する実証実験も始めようとしている。これには、淡水のブルーカーボンの第一人者である神戸大学大学院工学研究科の中山恵介教授を中心とした多くの学識経験者と共同で現地調査を進めている。

ブルーカーボンを多くの人に知ってもらい、企業や住民などの応援の輪を広げられないかと、前出の「Re.colab KOBE」の特設サイトには、学生たちの活動が記事や動画で紹介されている。

神戸市は、2025年度に向けたあるべき都市の姿を示す中期計画のタイトルに「海と山が育むグローバル貢献都市」を掲げた。そしていま「ブルーカーボン」という切り口から、地球温暖化への新しい取り組みを明らかにすることで、その計画を現実の行動へと移した。

地球温暖化にどう向き合うのかは、人類にとっての最大の課題だ。だからこそ、国や自治体だけが動くのではなく、民間企業や住民を巻きこんだ大きなうねりを持つ活動にしなければならないと神戸市は考えている。紹介したブルーカーボンへのさまざまな実証事業は、まさにその第一歩なのである。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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