ビジネス

2022.02.16

見えてくるのは「明るい未来」日本のスタートアップ6社


民放キー局、全国紙が大注目 「ニュース」をAIで進化させる 米重克洋|JX通信社




アプリやウェブでニュースを見ている人なら、JX通信社の恩恵を受けたことがあるはずだ。同社は、SNS上に流れる事件・事故をはじめとした、リスク情報の投稿をAIで収集し配信するサービス「FASTALERT(ファストアラート)」を運営している。2016年のサービス開始直後からすべての民放キー局や全国紙が取引先となり、ライブカメラや市民がアップする無数の映像・画像などの投稿が活用されてきた。

代表取締役の米重克洋は、自他共に認める「ニュースオタク」。学生時代の趣味は、複数の全国紙の読み比べ。同じニュースでも、メディアによって報じ方が違うことを発見するのが好きだった。もっと面白い記事を読みたい、その思いが高じて事業を立ち上げた。

「一般のユーザーがツイッターなどに上げている災害映像や画像は、AIで自動的に収集できる。そのかわりに記者が独自ネタの取材に集中できるようになれば、世の中の報道のレベルが上がるはず」と、米重は話す。従来は警察や消防に定期的に電話したり、地回りをするなど、人海戦術で事件や事故、災害の情報を集めていた。これをAI化すると、人件費や交通費のコストも抑えられる。質の高い情報に触れたいという米重の強いこだわりが、より安全で便利な社会をつくっていく。

よねしげ・かつひろ◎1988年生まれ。大学在学中にJX通信社を設立。報道機関へのニュース速報配信や選挙報道・情勢調査、ニュースアプリ「NewsDigest」開発などを手がける。

脱炭素の切り札に 世界が注目する「核融合技術」 長尾 昂|京都フュージョニアリング




燃料が海水からほぼ無限に取り出せてCO2も排出しないため、石油や石炭に代わる次世代のエネルギーとして研究が進む核融合。原子同士がぶつかる際に放出される莫大な核融合エネルギーを熱に変え、発電する装置を設計するのが京都フュージョニアリングだ。核融合発電に欠かせない加熱装置や、熱を取り出す炉内装置、プラントエンジニアリングに独自の技術をもち国内外から熱視線が送られる。2021年10月には英国の公的研究機関とも核融合炉の加熱装置やエンジニアリング事業の受注契約を結んだ。

世界中の企業との競争に打ち勝ち受注に成功した要因は、核融合の世界的権威・京大の小西哲之教授ら、核融合分野のベテラン研究者が参画していること。経験豊富なメンバーが「自分が何十年も続けてきた研究が世界を変えられるかもしれない」と若い研究者と議論しながら高いモチベーションで働いている。

同社の技術がさらに発展すれば、空気中の二酸化炭素を炭素に固定化する脱炭素装置や、従来より格段に速いスピードが出せる宇宙用核融合ロケットエンジンも実用化できる可能性がある。「環境問題の根本解決に加え、宇宙開発などの子どもたちに夢やロマンを与えられる事業も展開していきたい」とCEOの長尾は語る。

ながお・たか◎1982年生まれ。京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻修士課程修了。Arthur D. Little Japan、エネルギーベンチャー企業のエナリスを経て、現職。
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この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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