ビジネス

2022.02.02

元スシローCOOが主導する「おじさんスタートアップ」の野望

まん福HD代表取締役社長 CEOの加藤智治。東大在学中からアメフト選手としても活躍し、社会人Xリーグのアサヒビール・シルバースターでもプレーした


秘密は「うまい」へのこだわり


スシローでは、組織体制の変更やコスト削減、出店戦略など数字の面の改善はもちろんだが、「うまい」の追求に力を入れたことで他店との差別化を図れたのだと加藤は言う。

「スシローのルーツは大阪の大衆向け寿司店『鯛すし』。大手回転すしチェーンの中で唯一、地元の寿司店にルーツを持っています。元々、ここの大将が『安くてうまい寿司をより多くの方に提供したい』という思いを持っていたことから、回転寿司という業態での展開をスタートしたんです」

つまり、スシローは数ある競合のなかでも、最も「うまい」に強みを持っていたのだ。

当時、加藤はそのDNAを活かし、100円で提供できる「うまい」を追求。さらに、100円という価格の枠を超えた商品を提供することで、さらに上の「うまい」を追求した。その結果、業界3番手にいたスシローは、2011年に業界トップに躍り出た。

「食ビジネスにおいては『うまいかどうか』ということが根幹なんだと改めて感じた経験でした。それを企業努力でどのように安価に提供するかが重要なんです」

ちがさき濱田屋でも、そのノウハウを活かして新商品を開発。地元で水揚げされる釜揚げしらすをご飯の上に乗せた新たな看板商品「しらすわっぱ」(税込1200円)と、定番商品の幕の内弁当と「しらすわっぱ」を融合させた「しらす幕の内」(税込1200円)を企画し、承継から1カ月後には商品化した。

「他店の調査をすると、しらす弁当のしらすの量の平均は約40グラムでした。そこで我々はその倍以上乗せようと、末広がりの88(八八)グラムをのせることにしました。たくさん乗っているほうが“うまい”し、気分があがりますよね」


しらすを88グラム乗せた「しらすわっぱ」(税込1200円)

このような「うまい」を追求した新たな商品は、多くの顧客に受け入れられて大人気商品になっている。例えば2021年9月にオープンした「MARK IS みなとみらい店」では、売上トップ10のうち6品を新メニューが占めている。

「飲食業界で働く方は、お客さんに『うまかったよ』『また来るね』『ありがとう』と言われることが何よりも嬉しい。今回の新メニュー開発を通じて、従業員の方々にもそういった“働く喜び”に改めて気付いていただけたのでは」
次ページ > 人材のグレートローテーションを生み出したい

文=三ツ井香菜 取材・編集=田中友梨

ForbesBrandVoice

人気記事