こうした問題を解決するため、カリフォルニア州のスタートアップ「InnerPlant」は、作物がメッセージを発することのできる“スマートシード”を開発した。もちろん、作物が声を発するわけではない。InnerPlantは、植物の遺伝子を操作することにより、農家がドローンやスマートフォン、衛星などを使って作物が発するメッセージを把握できるようにした。
「植物は攻撃を受けた際、生物学的なレベルで反応し、自らを防御しようとする。それは早いタイミングで現れ、攻撃の種類によって異なる反応を示す。例えば、病原菌や害虫からのストレスに対しては、窒素欠乏や水不足に対するストレスとは別の方法で反応する」とInnerPlantのCEOであるShely Aronovは話す。
「我々は、作物の遺伝子コードを操作することで、作物がメッセージを発することができるようにした。これらの作物は、ストレスを受けた場合、葉にタンパク質を生成するが、このたんぱく質は蛍光を発する」とAronovは話す。
植物が発する蛍光の波長は、肉眼では捉えることができないが、スマートフォンのカメラにフィルターをかけて撮影したり、マルチスペクトルカメラを使えば見ることができる。農家の人は、ドローンやトラクターに取り付けたセンサーによって異常を検知することができる。大規模農場であれば、衛星画像を使うこともできる。
「最近、グリーンハウス内でバイオセンサーと通常の作物を使って干ばつに対する反応を実験した。植物に水を与えるのを止めたところ、3日ほどでシグナルが出始め、さらに3、4日経つと目に見えてしおれてきた。そして9日目には枯れてしまった」とAronovは語った。
一般の農作物の場合、乾燥し過ぎていることが判明してから深刻な事態に陥るまで、数日の猶予しかない。これに対し、InnerPlantの技術を用いれば、問題に対処するまでの日数が2倍に増えることになる。
干ばつの場合、最近雨が降ったか否かは誰でも把握できるため、対処がしやすい。しかし、菌類や害虫の被害ははっきりしない場合があり、特に農家が頻繁に確認できない遠方のエリアで発生した場合は把握が困難だ。