30U30

2021.10.27

きっかけは「自転車で日本一周」 日本農業CEOが見出した商機

起業家 内藤祥平

次代を牽引する新しいリーダーを発掘し、ビジネスからサイエンス、スポーツ、アートなど多彩なジャンルから30人の才能に光をあて、その活動をForbes JAPANとしてエンカレッジしていくことを目的としている「30 UNDER 30 JAPAN」。

今年、各分野に精通した専門家や業界オーソリティ、過去受賞者で構成されるアドバイザリーボードと編集部で審査を行い、フード部門の受賞者として選出されたのが、内藤祥平だ。



高品質な国産ブランディング商品、大規模生産で価格を抑えた自社産品、日本式農法を用いた現地産品。3本の商流から日本の農産物を東南アジア諸国に届けるのが内藤祥平のビジネスだ。内藤は、国内でリンゴ23ha、タイでイチゴ0.4haといった現在の生産規模を、「品目を増やし、5年で400ha以上に」と明言する。

今回内藤を推薦したESGの専門家・夫馬賢治は「衰退した日本の農業で、この成果はかなり貴重」と太鼓判を押した。


──農業ビジネスを志したきっかけは?

高校時代、自転車で日本一周中に、行く先々で農家のみなさんから農産物をごちそうになりました。世界でも類を見ないほどおいしいものをつくっているのに、実態はもうかっていない。日本の農業の課題に気づき、大学時代は米国やブラジルの産業化された農業を勉強しました。しかし、労働環境の観点からそれも正解ではない。マッキンゼー時代にも事例を多く見て、日本流の中規模農園の運営にビジネスチャンスを見いだしました。

──どのような苦労がありましたか?
「泥くさい話ですが、何軒も農家さんに話をきいて回り、海外の例も参照して、自分なりのオールスターな農法を探しました」


初期投資はかかりますが、リンゴ畑はビルを建て、家賃収入を得る投資と同じ。よいものはあるから、グローバルな展開を前提においしさを軸にしていけば、日本らしい収益性の高い農業ができると考えています。

──これから目指すことを教えてください。

農作物の市場規模は結局、胃袋の数。人口が減る以上、海外を見ないと伸びようがない。海外の人材育成から就労までのシステム構築が課題です。

──自分を奮起させるためにやっていることは?

かっこいい人間を見ること。歴史ドラマやスポーツから頑張る気持ちをもらっています。


ないとう・しょうへい◎1993年、神奈川県生まれ。慶應大学法学部卒。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社の農業セクターメンバーとして活動。2016年退社後、同年に日本農業を創業。

文=中村大輔 写真=映美

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事