見栄とお金。金融教育で子供たちに伝えたい大事なこと

shutterstock

今年の4月から高校の家庭科の授業で資産運用にも触れるようになるため、「日本でも金融教育がはじまる」というニュースを目にする機会が増えてきた。

筆者自身もお金をテーマにした番組に呼ばれたり、金融教育に関する講演をしたりする機会が多くなっている。その際に個人的に楽しみにしているのが、講演中に行われる質疑応答や講演後に参加者と交わす雑談だ。

今回はそんななかで新たに気づかされたお金の話について共有したいと思う。

お金の話がタブーではなくなる瞬間


金融教育の話をするなかで、日本の金融リテラシーについて話題が及ぶと、「日本人はお金の話をタブーにしているから金融リテラシーが低い」という意見をよく聞く。

確かに家族や友人との間でもお金の話はしないという人は多いだろう。ある日の講演のあと、参加者の女性数人とそのような話をする機会があった。彼女たちは家庭内ではお金の話は一切しないが、ママ友との間ではお金の話はよくしていると言う。

具体的にどのような話をしているのかと聞くと、「あの店ではポイント還元のキャンペーンをやっている」とか「あのアプリのクーポンはお得だ」というような内容であるという。

安く買えたり、買い物金額の一部が還元されたりという「お得情報」はお金に関する話ではあるものの、筆者が期待していたような内容ではなかったので、やや肩透かしをくらった感じも覚えた。

そこで、なぜそのような内容であればママ友の間でお金の話をするのか、理由を聞いてみると、目から鱗が落ちるような意見を聞くことができた。

ポイント還元やクーポンの話はポジティブな内容であり、かつ彼女たちにとってリスクもないので、話が盛り上がるのだという。これは世の中の金融リテラシーを高めたいと考えている筆者にとっては、とても参考となる重要な意見だった。

つまり、リスクを感じさせず、かつポジティブな内容であれば、お金の話はタブーではなくなるのだ。

それではお得情報以外の話はしないのかと彼女たちに聞くと、投資など他のテーマの話はしないという。なぜ投資の話を避けるのかを聞いてみると、ここでもまた意外な答えが返ってきた。

投資の話をしてしまうと、他の人の経済状況がわかってしまうと同時に、自分の経済状況も見抜かれてしまうからだという。筆者にこの視点はなかったが、確かに投資に関する会話を通じて相手の経済状況を知ることはたやすい。

筆者も投資に興味がある友人と会話をしていて、お互いに資産額や運用額は明かさなくとも、投資を始めた目的、投資手法や対象などを聞いているうちに、だいたいの経済状況はわかってしまう。

相手の経済状況がわかるとはいってもあくまでそれは想像に過ぎず、実際の数字がわかるわけではないのだが、筆者の経験から言えば、男性同士でお金の話をすると、少しでも自分の資産が多いように見栄を張るような人が多い印象がある。

彼女たちから言わせれば、女性同士でも見栄の張り合いが生じたり、時にはマウント合戦に突入したりすることもあると聞いた。

意外だが、こうした点も日本人が他人とお金の話をしない理由になっているのではないだろうか。歴史を振り返ってみても、人間というものは大変嫉妬深く、なかでもお金というものは嫉妬の対象になりやすいものだ。
次ページ > 金融リテラシーは投資の話だけではない

文=森永康平

ForbesBrandVoice

人気記事