鉄道のEV化はバッテリー面でも有利
列車用の大型バッテリーは、1台の車両に搭載するのではなく、複数の車両に分散することができる。また、スチール製の車輪と線路の上を走る列車は、高速道路を走行するトラックほど動力を必要としないため、テスラやニコラのセミトラックに比べて安価でエネルギー密度の低いバッテリーを使用することができる。1回の充電で500マイル(約805キロ)を走行するのに必要なバッテリーシステムは、同じ距離を走行するテスラのトラックに比べて約4分の1の大きさで済むとSouleは考えており、この点もトラックに対する大きな利点となる。
米国では、貨物列車と旅客列車に「Positive Train Control」という列車制御システムが搭載されており、パラレル・システムズの車両もこの仕組みに対応させれば、既存の貨物鉄道システムで運用することが可能だ。同社の技術を商用利用するためには、提携する鉄道会社が実証試験と安全性の検証を行い、連邦鉄道管理局から承認を得る必要がある。
パラレル・システムズは、2020年初めの設立当初にシードラウンドで約360万ドル(約4億円)を調達している。現在、同社は私有地内の線路を使ってプロトタイプをテストしており、数週間後には自社製カメラをベースにした自動運転システムを搭載した次世代モデルを評価用にリリースする予定だ。
Souleと、共同創業者のBen Stabler、John Howardは、かつてイーロン・マスクのスペースXで航空電子工学のエンジニアとして働いていた。3人は、航空宇宙業界から貨物鉄道へと大きな方向転換を図ったが、輸送によって排出されるCO2を削減することに魅力を感じたという。
パラレル・システムズによると、米国の貨物鉄道システムは世界最大規模を誇るが、常時利用されているのは3%以下に過ぎないという。「エネルギー効率が高い鉄道業界にEVや自動運転技術などの先端技術を導入し、鉄道による貨物輸送量を増やしていきたい」とSouleは述べた。