何を言いたいかというと、マーク・ザッカーバーグ率いるメタ(旧フェイスブック)は今後、マイクロソフトの熱心な応援者になるだろうということだ。
マイクロソフトは18日、ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収すると発表した。アクティビジョンは「コール・オブ・デューティ」や「ワールド・オブ・ウォークラフト」といった大ヒットゲームを手がける。規制当局などによる審査・承認にはしばらく時間がかかるとみられ、マイクロソフトは買収完了時期を2023年7月と見込んでいる。
マイクロソフトにとってアクティビジョンの買収は、ゲーム事業をさらに強化するとともに、メタバース分野の競争で優位に立つことを見据えたものと解釈できるだろう。コール・オブ・デューティーのような没入感のある多人数参加型ゲームは、現時点でメタバースに最も近い世界をつくり出しているものだ。
マイクロソフトはメタバースへの進出を狙っていることを認めているものの、それに関して一部の他社ほど多くは語っていない。ただ、サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はプレスリリースのなかで、アクティビジョン買収の意図についてかなり率直に述べている。
「ゲームは今日、あらゆるプラットフォームを通じて最もダイナミックでエキサイティングなエンターテインメント分野になっています。メタバースプラットフォームの開発でも重要な役割を果たすことになるでしょう」
いずれにせよ、マイクロソフトによるアクティビジョン買収の真の狙いがどこにあるのかは、メタにとってはあまり重要ではない。メタにとっては、真偽はともかく、マイクロソフトによるアクティビジョン買収がメタバース関連の動きとして描かれることが、自社の利益に最もかなうのだ。
メタは最近、ソーシャルメディアで独占力を保持しているとして反トラスト当局から再び圧力にさらされており、それによって手足を縛られた状態にある。端的に言えば、既存のソーシャルメディア分野で新たな買収を行うのは事実上不可能になっている。昨年末には、2020年に買収したGIF画像共有サービス大手ジフィーの売却を英当局から命じられた。
メタが手元の巨額資金をメタバース関連のM&A(合併・買収)に投じるには、競合他社もこの分野で活発に買収先を探していると証明することが必要になる。今後、メタバース関連の買収を行っても当局につぶされることがないという安心感を得るために、メタは、他社の間でもそうした案件の争奪戦が激しくなっていると説明できるような状況を欲しているというわけだ。
メタは、マイクロソフトによるアクティビジョン買収のような案件の実現を望んでいる。そうした前例があれば自社による買収、つまり自社がさらに大きくなることを正当化できるからである。