同社は、FDAが承認した解離性麻酔薬であるケタミンのR体を研究する。ケタミンは、全身麻酔に使用されるほか、うつ病の治療薬としても適応外使用されている。
R-ケタミンが期待されるのは、サイケデリックな体験をもたらさない一方で、迅速な抗うつ効果を発揮することだ。臨床試験でその効果が証明されれば、R-ケタミンは、治療抵抗性のうつ病患者のための新しい薬となり、FDAが承認した別の薬のSpravatoのように医師の監督下でクリニックで使用するものではなく、自宅で安全に使用できるものになる。
アタイ社が過半数を保有する子会社のパーセプション・ニューロサイエンス社は、R-ケタミンに関する臨床試験を米国で開始する。
アタイ社は、ピーター・ティールの支援を受けて、ナスダックで上場している企業だ。同社の共同創業者でCEOのフロリアン・ブランドは、臨床試験でR-ケタミンの安全性と即効性が確認できれば、「うつ病に悩む人々にとって画期的な事になる」と語っている。
パーセプション社は、すでに海外でR-ケタミンに関する2つの試験を開始しており、ニュージーランドで実施されたフェーズ1の試験では、PCN-101(R-ケタミンの開発コード)がすべての用量で「安全かつ良好な忍容性」を持つことが確認された。
試験の第2段階では、PCN-101とSpravatoの主成分であるエスケタミンとを比較した。その結果、PCN-101は過剰に摂取しない限り、エスケタミンに見られるようなサイケデリックな体験を誘発しないことが明らかになった。
パーセプション社はまた、9月に欧州において、治療抵抗性うつ病患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験の実施を承認された。この試験で同社はR-ケタミンがうつ病の症状を軽減する上で安全かつ有効であるかどうかを検証し、2022年末まで結果を出す予定だ。
パーセプション社のテレンス・ケリーCEOは、R-ケタミンの研究が規制当局の手続きを経て進行していることに勇気づけられているという。「PCN-101は、その有効性と投与のしやすさの両面で、臨床医や患者らにメリットを提供できる可能性がある」とケリーCEOは声明の中で述べている。
大塚製薬も市場投入目指すR-ケタミン
アタイ社の最高科学責任者のSrinivas Raoは、同社が追求している多くの医薬品にとってサイケデリックな体験は重要であるが、R-ケタミンの場合は特に、サイケデリックな体験を引き起こさない点が、治療抵抗性うつ病の治療に画期的な変化をもたらす可能性があると述べている。
「家庭で使用できるかどうかが重要だ」とRaoは話す。「私たちが注目しているシロシビン(サイロシビン)のような化合物は、医師の監督下での投与が求められる。しかし、もし家庭で投与できる即効性のある薬があれば、より大きな市場をターゲットにできる」