「幻覚ドラッグで神に会う」、最も過激なメンタルヘルス治療

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ピーター・ティールの支援企業も参入


一方で、ナスダックに上場するドイツのバイオ医薬品企業「アタイ・ライフ・サイエンシーズ」の共同創業者でCEOのフロリアン・ブランド(Florian Brand)は、幻覚剤がもたらす神秘的な体験がメンタルヘルスの改善に何らかのメリットをもたらすと述べている。

ピーター・ティールの支援を受けるアタイは、幻覚剤を用いたセラピーを開発中の英国企業Compass Pathwaysの最大の出資元でもある。Compass Pathwaysは、サイロシビンを用いた特許取得済みの薬剤を、うつ病の治療に役立てようとしている。ブランド自身も、サイケデリックセラピーを受け、神秘的な体験をしたと述べている。



「私は、これまで宗教やスピリチュアルな分野に関心が無かったが、サイロシビンを使ったセラピーを受けた結果、神秘的な世界の存在を実感した」とブランドは述べている。

Compass Pathwaysの共同創業者でCEOのラース・クリスチャン・ワイルド(Lars Christian Wilde)は、神秘的な体験をどのように表現するかは患者によって異なるが、どのような表現であっても、強烈な体験は治療上の良い結果に結びつくと述べている。

「神に出会ったと言う人が居る一方で、自我が幻想であることに気づいたという人も居る。サイロシビンだけでなく、おそらく多くのセロトニン系物質の治療効果に、このような経験が決定的に重要な役割を果たすと考えられる」と彼は話した。

Compass Pathwaysは昨年11月、治療抵抗性うつ病に対するサイロシビン支援療法の、待望の第2b相臨床試験のデータを発表した。この研究で、25mgのサイロシビン単回投与された患者は、プラセボを投与された患者との比較で、抑うつ症状の大幅な軽減が確認され、その効果は数週間に渡り継続した。

脳をリセットする作用


ワイルドは、今後のさらなる研究が必要だと述べているが、強烈なサイケデリック体験には脳をリセットする作用がある模様だと指摘した。

サイケデリックドラッグがうつ病やPTSDの症状を緩和するのは、5-HT-2A受容体のシグナル伝達に、神経可塑性を与えるからだと考えられている。神経可塑性とは、脳が新しい神経結合を形成するのを助ける作用で、その結果、迅速かつ持続的にポジティブな気分が生み出されると考えられている。

サイロシビンやMDMAを用いた心理療法では、1回の大量投与でうつ病やPTSDの症状がほぼ即時に軽減されるという研究結果が出ており、その効果は数ヶ月続く場合もある。
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編集=上田裕資

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