筆者が創業した企業リーダーシップIQが最近、米国で実施したアンケート調査では、「もし履歴書の名前を変えて自社の現在の職に応募した場合、採用選考を通過すると思うか」という問いに対し、確実に採用されると答えた人はわずか39%だった。一方で約45%が、採用されるかどうかは疑わしい、または確信がないと回答した。
現在、多くの企業が労働力の確保に苦労しているにもかかわらず、もしも自分が現在の職に応募したら採用されるかどうかわからないと答える人が多いのは、憂慮すべき状況だ。既存の優秀な従業員と同等の働きをする(と期待される)人材を新たに雇用できる仕組みこそが、機能性の高い求人・採用プロセスだ。しかし現在働く従業員の多くは、自社の人材採用制度がそれを達成できるという自信を持っていない。
原因の一端は、企業の求人条件が、実際の現場で要求されるものと大きく食い違っていることにある。
例えば、今回の調査での問いの一つとして、「職務記述書の基準に厳密には合わないものの、良い業績を上げてくれる可能性のある候補者が、自社の採用プロセスでは切り捨てられていると思うか?」と聞いたところ、自社が優秀な候補者を50%以上締め出していると考える人は3分の1に上った。現在起きている労働力不足と離職の波はそれだけでも厳しいものだが、さらに企業は優秀な人材を締め出すことで自分たちの首を絞めてしまっている。
経験年数や学歴など、多くの企業が課している恣意(しい)的な求人条件への固執を捨てるべき時があるとすれば、それは今だ。あなたの会社では、全ての条件にマッチしていたにもかかわらず、実際に働き始めると期待外れだったり、悪夢のような人材だったりという経験はあっただろうか? 反対に、必要な修士号を持っていなかったが、素晴らしい業績を上げた人はいただろうか? きっとどちらも経験していることだろう。
リーダーシップIQによる別の調査によると、新規人材の46%が1年半以内に解雇されたり、採用失敗例とみなされたりしている。その要因は、スキルや経験不足ではなく、仕事に対する姿勢にあった。
厳しい労働市場においては特に、企業は自社の掲げる求人条件が時代錯誤でなく本当に必要なものかどうかを見極めなければならない。私の経験から言うと、採用の基準が実務でのパフォーマンスと関係ないものになってしまっている場合は多い。人材の確保に真剣に取り組むつもりなら、企業は非科学的で恣意的な採用条件を廃止すべきだ。