世界で勝負するためのグッドスパイラルを回す
藤田:日韓の意識は、国策の違いも影響しています。Cool KOREAは、国内の文化エンタメ産業を世界で通用する水準まで高める支援をしてきました。Cool JAPANは逆で、日本水準のいいものを世界に知らせようとしてきた。「日本にもこんなにいいものがある」という発想をしているかぎり、韓国との差は縮まらないし、世界市場では勝てない。その意識を一回改めないとダメでしょう。
今回のパートナーシップが、そこを変える機会になるといいかなと。ただ、恐ろしくお金がかかるんですよね(苦笑)。どうやってこれから資金を作っていくかは考え中です。
その一方で、Cygamesのウマ娘も、相当な開発コストをかけていますが、それができるのも、これまでに『グランブルーファンタジー』などヒットしたゲームが数多くあるから。スタジオドラゴンもそうで、制作したものがヒットしたから次に大きくお金をかけられる。グッドスパイラルに乗せるまで、少しベンチャー的な考え方をしないといけないと思っています。
藤井:僕にはすごくいいプレッシャーですね。今までは、自分がどうにかしなくてはまわりに迷惑をかけてしまうというプレッシャーで、精神的にも追い込まれることがありました。でも、今は「これがダメだったら自分が死ぬだけ」というプレッシャー。今のほうがずっとワクワクできます。
藤田:プラットフォーム上では、どこの国の作品かは関係ありません。Netflixの『ペーパーハウス』はスペインだけど、世界水準でおもしろい。そういう作品たちと同じ土俵で競っていくには、日本発のコンテンツの良さを大事にしつつも、世界水準でやるんだと意識を変える必要があります。
そこにサイバーエージェントが関与する価値があると思う。これまではクリエイターが尖ったことをやると、慣習やしがらみで仕事がしづらくなる環境があったかもしれません。でも、我々は新しい世界でやっている。藤井監督には、ひたすらいいものをつくってほしいですね。
藤井:『新聞記者』のときは、まわりから「大丈夫? 干されるよ?」と心配されました。でも、みんなが右に行くと言ったときに一緒に右に行くタイプだったら、そもそも映画監督という仕事は選んでいない(笑)。
慣習やしがらみから自由になるには、まず自分たちの器を壊す必要があると思っています。今回のパートナーシップは、まさにそのきっかけになる。2022年は、まずは失敗を怖れず果敢に壁を壊していきたいと思います。