もちろん、自分や自分の行動習慣や癖を変えるのは言うは易し、行うは難しだ。本書に記されているトレーニングを経て変われた人もいれば変われなかった人もいて、その差は「自分の人生の価値や目的をどれだけつかめるか、くじけそうなときに諦めず、何度でもトライしなおせるか」だったという。「仕事でも私生活でも、最大のパフォーマンス、成果を出したいのであれば、そのことに興味を持って、最高のエネルギーを振り向けることが必要」で、本書では、自身の人生の価値や目的をどうやって明確化するかについても手ほどきがなされている。
「メールに対応したことで働いた気になるな」
本書は、自分のエネルギーをどうコントロールしてパフォーマンスを最適化、最大化するかについて、根性論ではなく取り組みたい人におすすめしたい本である。また、仕事と私生活の両方の充実をあきらめたくない働く女性にとって、まだまだ要職に女性が少ない日本社会における女性リーダーのロールモデルの本としても読むことができる。
そしてもちろん、これまで女性が直面するべき課題として扱われてきた「家庭と仕事の両立」を自分ごととして真剣に考える男性にこそ、時間ではなくエネルギーの使い方を最適化し家庭でも仕事でも120%活躍していただくために、ぜひ読んでいただきたい本である。
最後にもう一つ、印象に残った言葉がある。「メールに対応したことで働いた気になるな」という一文だ。横っ面をはたかれたような気になったのは、何を隠そう、筆者がメールに振り回されて半日が終わるというわかりやすく陥りやすい罠にはまってしまいがちだからだ。
本書の冒頭の「はじめに」には、「人間だから三日坊主は当たり前。失敗したらまた始めればいいのです。最初の第一歩をまず踏み出してください」とある。このありがたいお言葉に従い、まずは、行動変容による感情のマネジメントから、そして、「メールを処理して仕事をした気にならない」ところから、一歩を踏み出してみるのはいかがだろう。
『ピークパフォーマンス 効率と生産性を高め、成果を出し続ける方法』(野上麻理著、WAVE出版刊)
高以良潤子◎ライター、翻訳者、ジャーナリスト、外資系企業プログラムマネジャー。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年より米国系大手EC企業勤務。インストラクショナルデザイナーを務めたのち、現在はプログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括する。