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2022.01.19

会議で思わずイラッと? その感情、「トレーニング」可能です

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まず深呼吸、幽体離脱


感情、思考、精神のエネルギーの明確な定義はじっくり本書を読んでいただきたいが、2つ目の「感情」についての一節、「感情は訓練でコントロールできるようになり、継続的な成果を上げるのにも役に立つ」というくだりが印象的だった。ネガティブな感情や思考でいるとエネルギーにマイナスに働き、生産的な解決方法が思いつかなくなり、仕事の成果が落ちてしまう。ただ、生来そういった性格だったとしても、トレーニングでプラス思考に持ち込み、感情のエネルギーをコントロールすることは可能だ、と著者はいう。また、それを実現するためにはどのような訓練をすることが有効かという根性論ではない説明とエピソードが紹介されている。以下に一部引用する。

「例えば、誰かに期限付きでお願いしていた仕事をすっぽかされたら、怒りの直後に混乱が渦巻いてパニックになります。(中略)そんなときは、まず深呼吸、幽体離脱。(中略)起きてしまったことに振り回されるのではなく、自分がコントロールできる範囲の中で最善を尽くそうと考えるわけです。ビジネスの世界では、結構コントロールできることは多いものです」

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「次は、想定できる最悪の事態を描きます。たいていの場合、最悪の事態を思い描ければ、それを避ける方法も思い描けるものです。(中略)

1. 深呼吸をして、自分の置かれている状況を客観的に見て、感情が動こうとしている方向を意識する。そうすれば、感情を少しはコントロールできるもの。そこで『対処方法を含めて状況をコントロールするのは私だ』と思う。

2. まず最悪の状況を思い浮かべて、それを回避することに集中する。

3. できれば、その最悪の状況から何かポジティブな副産物ができないかを考える。」

上記の3ステップを当てはめる癖をつけていくと、感情的な耐性のキャパも増やして行くことができるという。

「トトロのぬいぐるみを机上に」?


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筆者が拝聴した著者の講演では、根性論や意志の力だけに頼らずに今すぐ真似ができるようなエピソードも紹介された。例えば、「会議で意図していなかった意見が出ると、とっさに感情的に反応する癖を直したい」というケース。著者が提案したのは、例えば、トトロのぬいぐるみを机に置いておいて、何か意に染まないコメントが会議で出て、つい、感情的なコメント返しをしてしまいそうなときは、すわ、机の上のそのトトロのぬいぐるみを握りしめる。握りしめているうちに一呼吸置けて気持ちがやや落ち着き、感情的なコメント返しをせず、(2)や(3)にも考えが及ぶようになる。

「感情的にならないように心がけよう」という気持ちだけだと、とっさの時にはいつもと同じパターンを繰り返してしまいがちだが、物理的なモノを使った新しい習慣を取り入れて癖づけることで、似た状況に置かれた際の反射的な反応を変えていくことができるという。


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感情のコントロールがうまくできるビジネスパーソンであれば、こうしたことはぬいぐるみなしで問題なく実践されている行動かもしれないが、未熟な筆者にはわかりやすくためになるエピソードだった。また、野上氏の講演では、「意識的に自分がポジティブになれるような訓練をしておくことで、仕事の場において、ポジティブに考える癖をつけることは可能」という一言や、「習慣を作り直していけば、強い意志だけに頼るのではなく、行動変容していくことはできる」という言葉が刺さったのだが、そのバックボーンとして、「感情はトレーナブル(トレーニング可能)」であるという考え方が一貫していた。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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