キャリア・教育

2021.12.18 11:00

東京五輪でブーム、「スケーターを育てる高校」に注目が集まる理由とは?


デザイン教育には、グラフィックやイラスト、映像制作、ファッションデザインもカリキュラムに組み込まれている。デザインや服、音楽、映像などのカルチャー面と密接に結びつくスケボーシーンにおいては、スケーターとしてプロになる道だけではない働き方も存在するからだ。細井はデザイン教育について、次のように語る。

「スケートボードには映像を撮るカルチャーがあるからフィルマーを目指すとか、デッキ(スケートボードの乗る部分)のデザインをグラフィックでするとか、卒業生ではファッションブランドを始めている人もいるし。さまざまな方面で活躍しながら、肩書きのひとつにスケーターがある、そういう可能性がある世界を知って欲しいです。

自分の好きなことに没頭して頑張って、その世界で食べていくことがいちばん幸せなことだと思うんです。反対に嫌なのは、スケボーは子どものときに少しかじったけど、生活していけないからと好きなことをやめてしまうことです。なのでスケボーが上手いとか絵が描けるとかのスキルの部分を伸ばしていき、好きなことで食べていくための武器になればと思っています」

スケートボードが五輪の新競技に採用されたのは2016年。その翌年にスケートボード&デザイン専攻は開設されている。東京五輪でブームが起こることを予想して、開校に勝機を見込んでいたのだろうか。細井はこう話す。

「もともとスケボーは日本でもこれまでにブームが何回かありました。そしてこれがスケボーの強みなのですが、カルチャーの要素が強いのでブームが去っても、競技まわりの市場はなくならないんです。

しかも同じような横乗り系のサーフィンやスノボと比べると安価に始められる。家のドアを開いた瞬間から全てが遊び場みたいな手軽さもあって、ブームが再来するとこれまで以上に拡大しやすい特徴をもつ市場だと思うんですよね。あとは若い人たちも注目している市場だと感じて、スケートボードの高校を開校しました。

東京五輪でのスケートボード競技採用に関しては、この専攻をやろうと企画を進めるなかで知りました。でもスケーターたちに話を聞いていくと、コンテストや五輪にはあまり興味がなくて、むしろ本気で頑張っている人は良いビデオパートをつくって発表して、ブランドにスポンサードしてもらう道を希望している人のほうが多くいました。

なので、五輪で盛り上がるのはわかっていましたが、それがあるので頑張っていきましょうというよりは、ストリートで腕磨いてプロとしてメシ食っていきましょうという方向に舵を切って、志望者のハートを掴もうと思っていました」
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文=河村優

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