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2021.12.14

ベンチャーキャピタル、「勝者がより勝者に、強者がより強者に」

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我々はプレIPOラウンドの一つ前のラウンドを目安に投資実行し、直前ラウンドでも既存投資家として追加投資しながら、海外機関投資家のシンジケーションを組んで資本市場に出ましょうというのがプレイブックになりつつある。

我々は、スタートアップの大型調達の増加、クロスオーバー投資家の積極的参入が起きた21年について、日本のスタートアップ・エコシステムのターニングポイントだと見ている。資金余剰だという論調もあるが、もともと十分な資金量がなかったとも言える。さらにもう一段進化するという意味でさらなる海外マネーの参入もありえる。スタートアップも、証券会社も変化のきっかけの年になる。

スタートアップは、機関投資家目線で、事業戦略・計画やエクイティストーリーについて議論できることがより重要になる。我々もそのような視点でスタートアップに寄り添い、業界全体の進化とスケールに貢献していきたい。(談)

「勝者がより勝者に、強者がより強者に」

━━ ANRI・代表パートナー 佐俣アンリ

『テッククランチ』日本版を見ても、どの国のスタートアップのニュースかわからなくなった。「調達金額の桁が多いから米国だ」「この事業領域で30億円調達なんて日本ではないだろう」という従来の常識が当てはまらなくなり、パッと見ではどの国の記事かわからないくらい、日本と世界の差は縮まってきている。よくも悪くも、北米のスタートアップ・エコシステムの相似形に近づいている。

象徴的なのは、グローバルから「(割安で)美味しいぞ、この国」と思われ、グロースマネーが充実してきたことだ。セコイヤ・キャピタル、DSTグローバル、ベインキャピタル、ソフトバンク・ビジョン・ファンドといった、世界的なビッグネームが日本のスタートアップに「普通に」投資する時代がきた。

こうした動きは、立場によって見方が変わる。日本のスタートアップ・エコシステムを俯瞰する立場をとれば、感慨深い。しっかりとしたスタートアップにしっかりと資金が集まる一方で、理由がわからなく勝つという牧歌的な市場の終わりを感じる。学生起業家に投資をして長く待っていたら成功した、というような機会は相対的に起きにくくなり、目立ちにくくなる。こうした市場の変化は、シード投資家としては若干の寂しさがある。

ベンチャーキャピタル(VC)の経営者としては、ティア1、ティア2、ティア3といった階層が生まれ「北米化」が進行中だと受け止めている。VCの大型化、SaaS台頭、機関投資家がVC市場に参入したことなどの条件が重なり、2〜3年前から方向性が明確となった。「強い投資家が強いディールを独占していく」流れになっていくだろう。

起業家支援が強いVC、多額の出資が可能なVC、起業家からの信頼が厚い強いVCが勝つ構図で、勝者がより勝者に、強者がより強者になっていく。ティア1のVCが余裕綽綽でよいディールをもっていき、米AirBnBのファイナンスのように、セコイヤ・キャピタルが一貫して資金調達をリードしていった状況に近づくだろう。日本では、リーガルフォースや10Xのファイナンスなどが代表例だ。
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文=Forbes JAPAN 編集部

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