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ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は2社目の投資についても「目の前に見えてそうだ」と語る。

ソフトバンクグループ傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」は、2017年の活動開始以降、SVF1で92社、SVF2で180社に投資をしてきた(11月5日時点)。同ファンドは21年10月、はじめて日本のスタートアップへ投資を行った。SVF2主導による、総額68億円のシリーズAラウンドでのバイオ企業のアキュリスファーマへの投資だ。

SBインベストメント・アドバイザーズ ジャパンブランチ コンサルタントアジア投資担当(前マネージング・パートナー)の松井健太郎に、その理由を聞いた。

──日本のスタートアップへ初投資をした。

1号ファンドのSVF1は、1社あたりの平均投資金額が1000億円強と大きく、米中を中心としたユニコーン企業への投資となるのが自然な流れだった。2号ファンドのSVF2となり、1. 地域分散、2. セクター分散、3. 1社あたりの投資金額の小口化、4. ステージの柔軟性という幅広い可能性を見る方針で取り組んでいる。

今回の日本初投資であるアキュリスファーマへの投資が、バイオ領域で、シリーズAラウンドのため、奇抜に見えるかもしれないが、それだけ柔軟性を持って取り組んでいるということだ。SVF2の1社あたりの平均投資金額200億円強(21年9月末時点)と比較しても金額規模が小さいが、SVFの投資方針に合致している良い会社には投資をする許容度があるとも言えるだろう。当然、SVF2で投資を検討している日本企業の中にも、大きいものもある。

私たちは「投資プリンシプル」を満たす企業に投資をしている。その条件は、1. 市場の大きさ、2. サービス・商品・技術の革新性、3. AI(人工知能)、データ活用で成長を加速しているか、4. 明確なビジョンを持つ起業家・経営陣か、5. 事業の持続可能性と収益化への道筋が見えているか──の5つだ。これらを満たすものであれば、幅広く投資検討する。

──アキュリスファーマへの投資理由は。

アキュリスファーマは、欧米で製造販売が承認されている睡眠障害の治療薬「pitolisant」の日本での臨床開発を行う。日本での睡眠障害に伴う社会経済的損失は年間15兆円と言われており、大きな市場がある一方で、病気として認知されておらず、いい治療薬がないという需給のギャップをうまく捉えているポジショニングの優位性がある。また、また海外ですでに承認されている治療薬を日本に導入するので開発リスクが低い。

さらに、(ノバルティスファーマ前社長の)綱場一成社長をはじめとした経営陣への評価も投資理由だ。彼らは、過去にADHD(注意欠陥多動性障害)疾患の啓蒙活動から薬剤普及までを先導したチームで、認知されていない病気の啓蒙活動から認知、薬剤の普及まで行い、日本社会に大きな利益を還元しようとしている。そこに共感したことも大きい。

同社と会ったのは7月だが、今回のラウンドでも投資しているVC、キャタリスパシフィックと2〜3年かけて描いた構想が実現した形だ。

日本では、政策によりジェネリックの使用を推奨するかたちで薬価改定された結果、国内の製薬企業にとっての新薬開発のメリットが少なくなったことで研究開発費が少なくなり、グローバル市場で「売れる自社商品」のみに使用する方向に舵を切っている。そのため、海外で商品化された治療薬を日本市場に持ってくる体力がなくなっている。それに伴い、海外では患者が選択肢として持ちうる治療薬が日本にはないという困った事態が起きている。

こうした外部環境の変化に着目し、海外で承認され、すでに商用化された治療薬を持ってくることは面白いのではないかという議論をしてきた。タイムマシーン戦略というビジネスモデルは新しくないが、ポテンシャルは大きいと感じている。

フォーブスジャパン編集部=文

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