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2021.12.14

ベンチャーキャピタル、「勝者がより勝者に、強者がより強者に」

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実際に、VCによるディールの取り合いがこの1年で劇的に進んだ。シリーズBラウンド、シリーズCラウンドのスタートアップへの投資競争が激化している。いいディールは、既存投資家がフォロー投資をし、それを海外機関投資家がかすめ取ろうと参入するという構造はこれまでなかった。

こうした環境下での我々の戦略のひとつが、従来と同様に、シードラウンドから支援してフォロー投資をしっかりすることだ。投資先に3〜4回までフォローオンするスタイルをより強化していく。また、「シリアルアントレプレナー(連続起業家)のファーストファイナンス」にしっかり投資することもしている。

投資先のLayerXやNOT A HOTEL、令和トラベルなどだが、創業期に数十億円のバリエーションがつくのは数年前ではありえなかっただろう。ただ、これも米国のスタートアップ・エコシステムに近似していくと考えると、「普通」の戦略だ。

総じて、「起業家にとってはいい時代」だ。VCの立場は、機関投資家から見ればコモディティーであり、スペシャリティを磨いていくか、ゼネラルのなかで強さを磨けるか、価値が問われていくタイミングだ。とはいえ、VCの基本的な顧客は「起業家」であり、起業家から選ばれなければいけない。

投資先のアキュリスファーマのように、シリーズAラウンドで68億円の調達ができるなど、創業直後の段階から、この規模感の金額を集められるならば、「起業家の思考のたががいい意味で外れる」だろう。

イグジットについても、SaaSで一定の成長率があれば、PSR(株価売上高倍率)は20〜30倍の評価を受けるため、「普通に」計算するとユニコーン規模の未上場企業が大幅増するだろう。また、合理的に考えると、M&A市場も大きくなる。

なぜなら、国内向け単体プロダクトでARR(年間経常収益)100億円を生み出せている会社は多くない。ラクス、freee、マネーフォワードなどを見ても、自社開発とM&Aを混ぜ合わせて、複数プロダクト展開している。この先、どのSaaS企業も、ARR200〜300億円を目指すことになるため、必然的にM&Aは活発化するだろう。現在、ARR1億円規模のスタートアップには買収依頼が山ほどきている。

また、時価総額2000億円、3000億円を見据えて、複数プロダクトの積層で勝ち続けることを未上場時から行っているのが、LayerXだ。

今後、ユニコーン規模の企業が数多く生まれ、さらなる成長過程でM&Aを行うというサイクルが回る。こうしたエコシステムが肥沃になったことで生まれているのが、前述の起業家たちの壮大な挑戦であり、いまの日本のスタートアップ・シーンの象徴的な動きとも言える。(談)

※※※
本連載は、発売中のForbes JAPAN2022年1月号の特集「起業家ランキング2022」と連動した企画です。今後、著名投資家へのインタビューを連載形式で随時公開を予定しています。

【連載】スタートアップ・トレンド
vol.1 2021年、「ギアチェンジ」した日本のスタートアップの進化
vol.2 2022年、スタートアップ資金調達額「1兆円」時代の到来か
vol.3「CVC新元年」だった2021年。さらなる拡大・飛躍へ向かう
vol.4 2022年、スタートアップ「スーパー・ブリッツスケーリング」競争時代へ
vol.5 日本のスタートアップ、「1兆円市場、1000億円IPO増、M&A増」へ

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文=Forbes JAPAN 編集部

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