ところで、同様のプラットフォームと電動パワートレーンを採用するトヨタbZ4Xとスバル・ソルテラのそれぞれの初EVは、2WDと4WDの仕様があり、航続距離は450kmほどだとメーカーはいう。また、急速充電機では30分で80%のチャージができる。
しかし、不思議なことに、トヨタやスバルなど日本を代表する新世代EVは、欧米の代表的なEVと比べると、加速性が違う。簡単にいうと、日本のEVはスピード競争ではなく、航続距離重視だ。例えば、大型SUVのリビアン「R1S」やポルシェ・タイカンがどちらも、0-100km/h加速3秒なのに対して、トヨタやスバルのEVは、8秒あたり。やはり、コストを抑えるために、パワーやバッテリー容量は欧米のEVより小さい。
ところで、EV反対派のイメージを持たれているトヨタだが、ついに電動化に本格的に動き出している。2022年春までに「bZ4X」を導入し、2025年までになんと15台ものEVを出す計画があるという。また、2035年までに欧州市場で販売する全ての新車をEV、FCVなど二酸化炭素を排出しないゼロエミッション(ZEV)に置き換えていく準備を整えていると説明している。
近年、EV化へのシフトの妨害をしていると批判をされているトヨタの豊田章男社長は、こう説明する。
「まず、トヨタは基本的にEV導入には賛成です。2030年には、EVとFC(燃料電池車)の販売台数を200万台にする目標を揚げていますし、車載用電池に対する投資額はダントツ業界1位を誇っている」
脱炭素の手段をEVに絞るのではなく、他の選択肢も用意すべきではないか。全EV化すれば、カーボンニュートラルは達成できると主張するEV派が大半のようだけれど、日本での現状を全く見えていないと豊田社長はいう。
トヨタbZ4X
では、何が問題なのか? まず日本のエネルギー事情を理解する必要がある。エネルギーは「作る」「運ぶ」「使う」という3つのプロセスがあるけれど、その流れの中で発生する二酸化炭素を2050年までにゼロにしようというのが、現在のカーボンニュートラルの目標だそうだ。
ガソリン車の代わりに、ガソリンを使わないEVに置き換えれば、クルマからの二酸化炭素の排出がなくなる。でも、EVが必要とする蓄電池の生産には多くの電力が必要になり、その電力が火力発電の場合、生産時にかなりの二酸化炭素が出る。日本の火力発電の割合は75%と高いため、自動車の電動化だけでは、二酸化炭素の排出減少には繋がらないという。
そして、変な話だけど、国内の全乗用車をEV化した場合に必要な電力量を試算したら、電力ピーク時での発電能力でもまかなえず、原子力発電なら10基、火力発電なら20基の増設が必要になるという話も聞く。
だから豊田社長が言うコメントは無視できない。そしてトヨタはEVの他にも、HVやFCVも同時に売り続けたいと言うわけだ。
しかし、それ以前に、EVの種類がこれだけ増えても、ユーザーの何パーセントが実際にガソリン車からEVに乗り換えしたがるのかは不明だ。やはり、まだ、コストの問題も残るし、インフラの問題と、電欠という航続距離に対する心配も残る。あ、もう一つ。一般人のハートを掴むために、EVのデザインをもっと格好良くして欲しいな。