リオハの若手がつくるスパニッシュワイン、初ヴィンテージの味は?

Forbes JAPAN本誌で連載中の『美酒のある風景』。今回は12月号(10月25日発売)より、「UKAN 2018」をご紹介。なめらかなタンニンと適度な酸で料理をよりおいしく味わうことのできる1本だ。


美食の街、という言葉からどこを連想されるだろうか。パリ? 香港? 東京や京都こそそのフレーズにふさわしいという向きもあるだろうし、筆者も大いに賛同するが、もうひとつ加えるならサン・セバスチャンを挙げたい。

スペインとフランスの国境に走るピレネー山脈の西側。バスク地方にある約60平方キロメートルの小さなエリアには、ミシュラン三つ星のレストランが3軒、二つ星が1軒、一つ星が7軒あり、合計18の星が輝く。そしてコンチャ湾に面した旧市街地には無数のバルがひしめき、世界中から集まった美食家たちが夜な夜なバルをホッピングしてはワイングラスを傾ける……まさに食い倒れの街なのだ。

そのサン・セバスチャンから内陸に2時間ほどクルマを走らせると到着するのがリオハ。古代フェニキア人の時代からワインを生産していたといわれ、19世紀には地元産のブドウであるテンプラニーリョをボルドーワイン製法で醸した現在のスパニッシュワインスタイルを確立させた、スペイン随一の銘醸地である。

このリオハ産のワインが世界へ広がったきっかけは19世紀後半に害虫フィロキセラが仏全土を襲い、仏産ワインが枯渇したため、ワイン商たちがピレネー山脈を越えてリオハまで足を延ばしたという興味深い経緯があるのだが、それはまた次の機会に譲るとして……。

「UKAN」は歴史あるつくり手の5代目として生まれた従兄弟がタッグを組んで独立。リオハのなかでも冷涼な気候であるリオハ・アラベサ地区で、平均樹齢50年のブドウが育つ畑を選定し、化学肥料や殺虫剤を不使用で栽培。収穫や選果もすべて手作業で、少数ながら高品質なワインをつくっている。今回リリースされた「UKAN2018」が初ヴィンテージだというから、今後が楽しみな新進なボデガだ。

その「UKAN2018」を評して「なめらかなタンニンと適度な酸で料理をよりおいしく味わうことのできるスパニッシュワインの王道」と語るのは「エネコ東京」支配人の伊藤慎一郎だ。

やはりスペイン・バスク地方の三つ星レストラン「アスルメンディ」の日本店であり、天才料理人といわれるエネコ・アチャの名前を冠した同店なら、スペインの雰囲気そのままに美食とワインを愉しむことができるだろう。美食の街を実際に旅することができるようになるまでいましばし待たなくてはならないが、東京にいながら世界の美味を味わうことができる。これもまた、美食の街である東京の利点だといえるだろう。

UKAN2018



容量|750ml
品種|テンプラニーリョ100%
価格|10890円
問い合わせ|エネコ東京 03-3475-4122
 

今宵の一杯はここで エネコ東京


バスクの三つ星レストランの日本店

スペインでミシュラン三つ星を6年連続で獲得し続けている「アスルメンディ」エネコ・アチャ氏による日本店。麻布の閑静な邸宅街に建つコンテンポラリーな一棟を広く使用し、グリーンハウスでのピクニックから始まるコースは伝統的なバスク料理を新しい素材や調理技法で独創的に表現する。最先端ガストロノミーを日本にいながら味わえる貴重な一軒だ。


「熊本産赤牛のロースト」は14300円(サ別)~コース内の一皿

エネコ東京



住所|東京都港区西麻布3-16-28 TOKI-ON 西麻布
電話|03-3475-4122
営業時間|12:00-15:00(LO13:30)・18:00-22:30(LO20:00)
定休|月、第2・第4火(祝日の場合は翌日)

photographs by Yuji Kanno | text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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