秋山さんからの相談を受けた清水さんは、まず「なくしてはダメだ」という気持ちが生まれたという。
「楽しいサーフィンライフを送れるきっかけをくれたショップですから。なくなってはいけない、なくしたくない、という強い思いを純粋に抱きました。ただその思いは個人的なもの。僕が何かできるわけでもない。上司に相談し、絶対に会社にとってプラスになることを訴えました」。
以降、清水さんの奮闘が続く。経営陣に対しては、それまで同社が得意としていなかったサステイナブルの分野やアクティビティの活動拠点になるとプレゼン。リサイクル素材を使ったオリジナルウェアの展開や、サーフィンやヨガのアクティビティに触れられる場にできるとし、新しい顧客の創出、会社のイメージ向上につながるとした。
さらにコミュニティ形成にも期待を持たせ、事業としての持続性と、顧客の健康的な生活の持続性をかなえる場所を目指したいと訴えた。サーフィンにサステイナブルやウェルネスなどの要素を組み合わせた“現代的なサーフショップ”としての提案は、大きな反対の声もなく受け入れられたという。
そして2人は国内屈指のサーフカルチャーを牽引してきた地域のサーフコミュニティに敬意を持って挨拶へ。こちらも総じて受け入れてもらえ、晴れて東京のアパレル会社が営むビーチサイドのショップながら、自らが仕入れ手掛けるサーフボードやウエットスーツを並べて再スタートするにいたった。
世界の海とつながるサーフショップとして
ショップ名には数年前に改名したCGSを採用して移転オープン。既にいくつかのプロジェクトが稼働しているが、やはり気になるのは「カリフォルニア」が伝説的な存在となりえた、リアルタイムでかの地の空気に触れられる機能がCGSにも期待できるのかという点だ。
折しも10月にはジョエル・チューダーが世界王者に返り咲いた。はたして目下世界ナンバーワンの存在が湘南に舞い降りるのか、否か。
「ジョエルには事業承継について報告をしました。するとコロナが明けたら行くよと返信をくれたので、そのような機会をつくりたいと思っています。またイベントスペースを設けたこともあり、アーティストのトークショーなどコンテンツには多様性を持たせたいと考えています」。
秋山さんの言葉を受けて発した清水さんの言葉も力強い。
「いちばんのプレッシャーはファンの期待を裏切らない場にするという点。なんか変わったねと言われるのは嫌ですし、何も変わらないのも違うと感じます。石田さんたちが築いた『カリフォルニア』の匂いをいい形で残しつつ、清潔感のあるユナイテッドアローズらしさを取り入れる。そんな場にしていきたいです」。
日本のサーフシーズンは春から秋にかけて。年をまたいで鵠沼海岸から届く新時代の幕開けを期待させるニュースが、今から待ち遠しい。
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(この記事はOCEANSより転載しています)