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2021.12.11 12:30

なぜユナイテッドアローズは湘南の「伝説的サーフショップ」を事業承継したのか


世界一のカリフォルニアにリアルタイムで触れられた



[左]秋山晃二さん●1977年、神奈川県生まれ。茅ヶ崎で生まれ育ち、中学生でサーフィンを始める。志向はフリーサーフィン。「カリフォルニア」へは友人が働いていた縁で通いだし、やがてスタッフとなる。現在は“オリジナル”を知るメンバーとしてCGSに勤務。 [右]清水 学さん ●1974年、長野県生まれ。ビューティ&ユース本部本部長。サーフィンは学生時代にショートボードで始めたものの本格的にのめり込んだのは「カリフォルニア」と出会いロングボードを手にしてから。今は多彩なデザインに乗りつつ楽しい湘南ライフを送る。
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「コンペ志向とはかけ離れたサーフィンを石田さんは求めていました。格好いいサーファーのアートや音楽、ライフスタイルも提案してサーフィンの多様性を伝えたかったのだと思います。

ショップにはサーフギア以外の商品も置いていましたし、もともとは雑貨やオーガニック商品を海外から仕入れる仕事をするのが夢だと言っていましたから、複合的な要素を持つ店になったように思います」。

当時を振り返るのは、現CGSのリーダー兼バイヤーであり、オリジナルの「カリフォルニア」スタッフでもあった秋山晃二さんだ。
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’03年頃からひとりの客として足を運んでいたユナイテッドアローズの清水学さんも品揃えの“面白さ”にはひかれていた。清水さんは社会人になってから本格的にサーフィンに取り組み始めた人。ジョエルに影響を受け、ファンとして彼の情報を集める過程で「カリフォルニア」を知り、通い出したのだという。

「行ったら何か買って帰りたくなるような品揃えが印象的でした。サーフギアだけでなく、古着に手を加えたアパレルもそうですし、お天気棒なんかもありました。それは柱とかにかけておく細い棒状のもので、垂れ下がると雨になり、反り返ると晴れるといったもの。

何げないながらサーファーの琴線に触れるアイテムはほかで見られないですし、そういう出会いが楽しかったですね」。

行けば誰かに会えそうな雰囲気も清水さんには魅力的だった。

「壁に描かれたサインがショップのすごさを物語っていました。ジョエル・チューダー、アンディ・デイビス、トーマス・キャンベル、バリー・マッギー、アレックス・ノスト、タイラー・ウォーレン、ロビー・キーガルなどジョエル登場以降のシーンを盛り上げてきたサーファーはほとんど来ていると思います。トミー・ゲレロもよくライブをしていました」。

世界一の存在がプライベート感覚で身を寄せ、仲間もまた屈託のない表情を見せる。店内にはカリフォルニアの空気が流れ、サーフィンの本場がもたらす自由があった。それが「カリフォルニア」の特異性。

あとにも先にも、同様の世界観を体現できたサーフショップは見られない。だから“伝説”となったのだ。

ユナイテッドアローズがなぜ事業承継するのか?


そして清水さんが通い始めてから20年近くが経ち、「カリフォルニア」に転機が訪れた。20年もの時間が流れればムーブメントはひと段落。その間には石田氏の逝去もあり、近年は経営にも携わっていた秋山さんが今後について清水さんに相談するようになる。それが2年前だ。

「その頃、より良く続けるためにはどうすればいいかと、ずっと考えていました。企業などの大きな力、信頼できる人にサポートしてもらえないか。そう思い、清水さんに相談したんです。

僕としては、自分が一緒にやっていくかどうかは別にして、店やブランドが語り継がれる状況をつくらなければと思っていました」。
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編集・文=小山内 隆 写真=鈴木孝之

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