処方オピオイドの影響
現在のオピオイド危機では、処方されたオピオイドの誤用や乱用の影響が、激しい議論の的になっている。オピオイド処方数がピークに達した直後の2013年には、報告された薬物過剰摂取による死者数4万4000人のうち3分の1以上が、処方オピオイドの不適切な使用によるものだった。
2013年以降、薬物過剰摂取による死者のうち、処方オピオイドの不適切な使用を原因とする事例の割合は減少している。その一因は、各州や郡で制定された規制政策と、2016年に米疾病予防管理センター(CDC)が打ち出した推奨ガイドラインに基づいて、オピオイドの処方が減少したことにある。
オピオイドには、痛みに苦しむ人に処方される合法的な用途もあることから、専門家のなかには、オピオイド処方の「振り子」が、処方を厳しく制限する方向に振れすぎており、無理やり減らしている場合さえあると主張する人もいる。
とはいえ、処方オピオイドが誤用、乱用、転用されるケースがあることは否定できない。そしてこの点で、問題は複雑になっている。この問題には、製薬業界から規制当局、医師、保険者(payer:連邦政府や民間保険会社など)、薬局、卸売業者、患者まで、多くの関係者が絡んでいる。
政府の政策決定者に求められているのは、現在のオピオイド危機の主な原因、すなわち違法フェンタニルとヘロインに的を絞った取り組みを強化すると同時に、処方オピオイドの誤用や乱用を抑制する予防的アプローチのあり方を見直すことだ。
オピオイドの問題は複雑だ。この危機に対処するためには、多くの関係者が連携し、臨床や公衆衛生上の効果的な戦略をとる必要がある。