ソーシャルメディアに「ノー」を突きつけたラッシュ
ラッシュは、人気のプラットフォームを離れることで、ターゲットとするオーディエンスから損失が発生するとしても、今後1年間は、今回サインアウトを決めたSNSを利用しないと述べている。ただし、北米法人のラッシュ・ノースアメリカは、ツイッターやユーチューブなどの一部チャネルについては運用を続ける意向を示している。
ラッシュは、今回の決断について説明するなかで、ソーシャルメディアの「深刻な弊害」はきちんと認識されていないと指摘した上で、現在の状況を、「気候変動が数十年にわたって無視され、軽視されていた」時期にたとえた。
同社のジャック・コンスタンティンがとりわけ問題視しているのは、ユーザーにコンテンツを見続けさせるよう設計されたアルゴリズムだ。こうしたアルゴリズムは、不健康な思考を助長し、ユーザーのメンタルヘルスに悪影響を及ぼす恐れがあるという。
「売上に1000万ポンドの損失が出る恐れがあることも、私たちは承知している。今後は、これを何とかして取り戻さなければならない」と、コンスタンティンはBBCの「トゥデイ」で語った。「これから1年をかけて、失った売上を取り戻すべく取り組んでいく。私たちなら達成できる、と前向きに考えたい」
「有害な原材料を使わない」という社是
ラッシュの共同創立者で最高経営責任者(CEO)を務めるマーク・コンスタンティンはこう語っている。「私は生涯をかけて、自分の作る製品に有害な原材料を入れないことを心がけてきた。ソーシャルメディアを使う際にリスクにさらされていることを示す証拠が数多く出てきており、私は、自分の顧客をこうした有害なものにさらしたくない。そこでソーシャルメディアを、私たちの使うツールから外すべき時だと判断した」
ソーシャルメディア戦略の再考に踏み切ったブランドは、ラッシュが初めてではない。2021年1月には、ファッションブランドのボッテガ・ヴェネタが、4月に季刊のデジタルマガジンを立ち上げる前にソーシャルメディアの利用を休止すると発表し、世間を驚かせた。
さらに2021年6月には、ファッションブランドのバレンシアガが、ツイッターの1つの投稿を除いて、フェイスブックやインスタグラムなどすべてのソーシャルメディアの投稿を消去している。