発想は、大学時代の「カンニング野郎Aチーム」
私には大学時代,「カンニング野郎Aチーム」(当時大人気だった、アメリカのNBC制作・放送のテレビドラマ「特攻野郎Aチーム」からのネーミング)というグループを組織していた友人がいたんです。彼らはまさにカンニングに心血を注ぎ、堂々たるズルをしていました。
たとえば、Tシャツの背中に英単語などをプリントしておく。そしてチームでくじ引きをして、負けたメンバーがそれを着て、試験の教室の最前列に座る、などという戦略です。
ですが、単語にヤマをかけ、Tシャツをプリントショップに持ち込んでオーダーをし、あるいは自前でアイロンで1個1個印字したり、出来上がったものを確認したりしているうちに、すっかりそれらの単語を覚えてしまってるんですよね。
だからそんなふうに手をかけて装置を作ると、けっきょく記憶に役立つ。「ヤマをかける」という作業も、試験範囲をレビューし、要点をかいつまむ点で復習になる。学生時代、「Aチーム」の苦労を目撃して、そんなことをぼんやりと考えていたりはしたんです。
「ちっちゃいところにまとめる」のはポイントをかいつまむ作業
試験での「カンペ持ち込み可」にしたのは、そんな学生時代の「原風景」もあったからですが、実際に実行しようと思ったのは、大阪大学で教えだしてから気づいた「法学あるある」のせいもあります。
法学系の試験では『六法』持ち込み可がふつうなのですが、試験の範囲は『六法』の全部ではなく、例えば憲法なら憲法の条文を開くはずなのに、しきりに「商法」とか、後ろの方ばかりこそこそ開いている学生がいた。明らかにそこにカンペをはさんでいるんですね(笑)。
そんなことをするくらいだったらいっそ学生に、教える側が一生懸命強調したポイントをあらかじめ小さな紙にまとめてこさせて、持ち込ませるのがいいんじゃないか、と思うようになった。
ただ一度、大阪大学での試験当日に、私がインフルエンザで休まざるを得なかったことがあったんです。その日は、棟居快行先生という憲法の偉い先生が代わりに試験監督をしてくださった。
ところが学生が、「カンニングペーパーはどうしたらいいですか?」としきりに聞くので、棟居先生は当然、「ナニっ? 何がカンニングペーパーだ、堂々と聞くな!」となりますよね。
幸い、事情を心得ていたティーチング・アシスタントの男性が、かくかくしかじか……と説明してくれました。そうしたら棟居先生も「皆がほしがる『正解のもとを見ながら答案作成してよい』という条件をあえて提供するのはある意味斬新、逆に不正行為が起こりようがないな、よろしい」と許してくださって。
答案用紙では「理解していること」を証明する必要がある
実は最初は「なんでも持ち込み可」にしようと思っていたんです。でも、そうか、弁護士とか法学者のお父さんを連れてこられたら困るなあ、と気づいて……。そうすると問題そのものに意見を言われるかもしれないですし(笑)。でも「お父さん、お母さんの持ち込みは禁止」とか例外、細則を設けなければならなくなると面倒なので、結局「A4のカンペ」1本にしました。