「支援を望まない人」もいる。若者が着ぐるみ姿で街頭に立つ理由

名古屋駅前で声かけをする。メンバーには高校生、大学生、社会人もいる


「なぜ、必要とする若者と福祉がつながらないのか」と思う人もいるかもしれない。しかし、明らかに福祉的支援が必要に思える状況の10代や20代で、支援を拒否する人は少なくない。

理由は様々だが、一度は福祉につながったことがあっても、怒られたり、否定されたり、たらい回しにされたり、自分の意見を聞いてもらえなかったり……など、嫌な思いをした経験を聞くことも多い。そうなると大人は信じられないし、どうせ誰も助けてくれないと諦めモードにもなりがちだ。

「自分よりもっと支援を必要としている人がいる」「自分はそこまでひどくない」と、自力で頑張ろうという人もいる。

彼らがせっかく勇気を出して「助けて」の声を上げても、それを受け取る方に聴く力がないと、とたんに子ども・若者たちは、離れていき、二度とやってこない。

だからこそ、全国こども福祉センターのような団体は稀有な存在だ。ここには、児童養護施設出身者や無国籍の若者、障がいや非行経験のある人など、多様な背景を抱える人がメンバーとして参加している。

社会から「要支援対象者」として扱われたこともある彼ら自身が、自分たちで子ども・若者の課題を捉え直し、アウトリーチの実践者として主体的に活動することの意味は大きい。声をかけられた若者が仲間になり、今度は声をかける側にまわる。彼らだからこそ理解できることや共感があり、その上での距離の取り方や聴き方、応援の仕方がある。

子ども・若者の力をもっと信じていい


この活動を始めた当初は、教育・福祉関係者から理解を得られず「見向きもされなかった」と荒井さんは言う。

助成金頼みの活動は、目に見える「成果」を求められ、声かけの数字を追う形になり、雰囲気が悪くなってしまったこともある。批判や試行錯誤の中で、挫けそうになった荒井さんを励ましてくれたのは、なによりも一緒に活動する子ども・若者たちだった。


全国こども福祉センター代表、荒井和樹さん

「僕自身が活動を通して彼らに支えられてきたんですよ」と荒井さんは語る。

子ども・若者は決して一方的に支援されるだけのか弱い存在ではない。若者たちが、時に摩擦が起きながらもお互いを尊重し、成長する姿を目の当たりにしてきて、フラットな場や関係がきちんと安心を育めば、その人の中にある本来の強みや力が発揮されていくのだと、荒井さんは確信している。
次ページ > 「結局は人権の話なんです」

文=矢嶋桃子

ForbesBrandVoice

人気記事