日本発の技術、QRコードの歴史
最初のQRコードはピクセルに情報を格納した、高速読み取りが可能な四角い画像で、1994年にトヨタの子会社であるデンソーウェーブによって開発された。自動車の製造現場では車両や部品を正確に管理する必要があり、すでに普及していたバーコードより効率のいい手段として使われるようになった。横方向だけでなく縦横にも読み取ることができ、はるかに多くの情報を格納できるからだ。
QRコードが普及するよう、デンソーウェーブはあえて特許を公開した。しかし、高い有用性にもかかわらず、一部の先端技術のようには世界を席捲しなかった。
サイバーセキュリティ企業のカスペルスキーによると、QRコードが広く普及するようになったのは、2002年に日本でQR読み取り機能付きの携帯電話が売り出されてからだ。以来、ウェブサイトのURL、ポッドキャストや各種アプリなど、あらゆる類いの情報を格納するために使われてきた。なかには英国に拠点を置くQRメモリーズ社のように、墓石に付けるQRコードを発行する企業まである(墓を訪れた人が読み取ると、故人の人生を紹介するウェブサイトにアクセスできる仕組み)。それでも、必要不可欠な存在にはならなかった。
コロナ禍で高まる需要
しかし、世界を揺るがすパンデミックによって事情は一変した。新型コロナウイルスの影響でQRコードは一気に人気を取り戻し、あの画期的なピクセル画像が再び巷にあふれるようになった。感染対策としてのタッチレス化を進めるために、紙のメニューをなくしたい飲食店や当日登録できる新型コロナの検査機関など、さまざまな組織や団体が使い始めた。
今や誰もが、あの謎めいた四角い画像を日常的に目にしている。お気に入りのレストランで食事するときも、映画のポスターをチェックするときも、小売店のショーウィンドウを覗くときも。
GettyImages
さらにQRコードにアクセスすることで、私たちは情報提供を行ってもいる。対話型AIを用いたチャットボット開発企業ガプシャップ(Gupshup)のCEOビーラド・シェスによると、「QRコードは今やあらゆる業界で利用されている。多くの企業が消費者をチャットボットに誘導し、彼らの消費内容に関するデータを集めている」。