結核による死者数が再び増加 コロナ禍で長年の進歩が台無しに

Jefri Tarigan /Anadolu Agency/Getty Images

結核による世界の死者数は2020年、過去10年以上の間で初めて増加した。世界保健機関(WHO)が先日発表した報告書が明らかにした。

理由には、新型コロナウイルス感染症により治療が中断されたことや、限られた資金やリソースが新型コロナウイルス感染症との闘いに向けられたことがある。同報告書では、新型コロナウイルスの流行が私たちの健康や死に至る他の病との闘いに破壊的な波及効果を与えていることが浮き彫りになった。

WHOによると、2020年に世界で結核により死亡した人の数は約150万人で、2019年の推定140万人から増加している。

データからは、結核による世界の死者数が2005年以降初めて増えたことが示された。WHOはこの数字が、中国やブラジル、バングラデシュ、エチオピアなど結核患者が多く貧しい傾向にある30カ国での死者数の増加を主に反映していると指摘した。

一方で、新たな結核の診断数は2019年の約710万人から減り、2020年は約580万人になった。WHOは、結核を抱えているもののまだ診断を受けていない人は約410万人に上ると推定している。これは、2019年の約290万人から増加している。

WHOは、結核のための必要不可欠なサービスや治療が中断したことや、結核のために割り当てられた資金やリソースが新型コロナウイルス感染症対策に回されたことが、世界中で結核を抑制するための長年の進歩を消し去ったと述べている。

WHOのテドロス・アダノム事務局長は、今回の調査結果を「憂慮すべきもの」とし、結核分野での投資や研究、イノベーションの差し迫ったニーズを示す「世界的な注意喚起となる」べきだと述べた。

WHOの予測では、結核による死者数は今後2年で今よりはるかに増えることが見込まれている。

アダノム事務局長は「この報告書は、新型コロナウイルス感染症の流行により必要不可欠な医療サービスが中断されることで、結核との闘いにおける長年の進歩が崩壊していくかもしれないとの私たちの恐れを裏付けている」と述べた。

新型コロナウイルス感染症により水の泡になると専門家が危惧するのは、結核との闘いにおける進歩だけではない。医療サービスの中断の多くは、より未発達な医療システムを持つ貧しい国の住民により大きな影響を与えている。
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翻訳・編集=出田静

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