ビジネス

2021.09.28

シリコンバレーの反省は「男性優位」であること。日本にはコピペするな

Women’s Startup Lab創業者兼CEO 堀江愛利


経済界は「エコシステム」の構築を


経済界が今取り組むべきなのは、「エコシステム」の構築。未来の「こうありたい」などのビジョンと共に、パワーポジションにある企業やリーダー人など、資金の源になるLP(有限責任組合員)が率先してダイバーシティのガイドラインを整備するなどこが有効だという。

“女性が25%以上マネジメントにいる企業は業績が高い”と多くのデータも出ているように、投資・ビジネスについてはしっかり根拠のある話だ。各ファンドにLPなどから「“○%は女性投資家を入れる” “○%は女性起業家に投資していく”なども有効だ。

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Getty Images

また、企業の組織内における大規模なシステムチェンジも必要だという。「今の組織を変える事とは別に新しいものをつくってしまう。例えば全社員の20%を“Innovation Division”とし、25%が30歳以下、30%は女性、30%は男性という風に、ダイバーシティに配慮した組織にしてしまう、という手もあります」

実際に米Amazonでは、パートタイム従業員のみで構成される部門を作ったところ、女性だけでなく男性からも多くの異動希望があり、成果も挙がっている。

イノベーションには、意見の交換ができ“あたりまえ”を無理にでも崩せる構造とそのチームが団結できる要素が必要。このパートタイムのチームでもパフォーマンスが予想を上回る結果となったのは、バックグラウンド、考え方、働き方の“ダイバーシティー”が原動力になったからだという。

「私は“女性”起業家の専門だと思われがちですが、イノベーションの本来の姿は“人”です。シリコンバレーで素晴らしい人たちの葛藤をみてきました。本当のイノベーションの成功をと思うのなら、多種多様な人の“掛け算”の達人となってください。ダイバーシティーこそがイノベーションの原動力です」。


ジェンダーギャップ改善に努める企業は?


Forbes JAPAN 11月号の「AIが厳選!最強のサステナブル企業 100」特集で発表した「女性活躍推進ランキング」では、ジェンダーギャップに大きな課題が残る日本企業の中でも、従業員・管理職・取締役における女性比率が高く、賃金の男女比も少ない企業がランクイン。人材・金融・医薬品業界が目立つ結果となった。

堀江によると、女性活躍推進にはグローバル企業ではユニリーバやゴールドマン・サックス証券(GS)の取り組みが参考になるという。両社は、社内はもちろんのこと、スタートアップ支援においてものジェンダーギャップ改善に努めている。

ユニリーバはアーリーステージのスタートアップへの投資について「2023年までに、女性起業家の企業への投資を50%にする」と発表しており、GSは「ボードメンバーに女性が1人もいないスタートアップの支援はしない」と表明しているのだ。

女性の活躍推進は、SDGsでもゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」として設定されている。

堀江は「今はサステナブルな企業経営が求められる時代。そのためには企業がソーシャルレスポンシビリティを果たす必要があり、中でも女性の活躍推進は重要項目です。未来を担うスタートアップを中心に女性の活躍が進み、日本のビジネス界に新しいエコシステムが構築されていくことを期待しています」と締めくくった。


Ari Horie◎Women’s Startup Lab創業者兼CEO。広島県出身。IBM、スタートアップ数社を経て、シリコンバレー初、女性に特化したアクセラレター“Women’s Startup Lab”を創業。独自の育成プログラムと強靭な現地ネットワークで、グローバルに女性起業家の育成やベンチャー支援を行い、その功績を称えられ、数多くの賞を受賞。

文=田中友梨

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