男性優位なスタートアップ界
スタートアップ界では特に、まだまだ男性がマジョリティーを占める。そのため気を付けないと男性的な会話と関係の持ち方を、そのままスタートアップのカルチャーに持ち込んでしまう。「ブロカルチャー(男性仲間の絆=ブラザーのような信頼関係をもった男性びいき文化)を作ってしまうのです。シリコンバレーもこの点では大きく失敗しました」と指摘する。
悪気はないとしても、無意識に女性を軽視するようなカルチャーでは、自然と女性が入りにくく、人脈を作りにくくなる。また、女性本人の意思や成果とは別に、女性というだけで偏見を持たれ、投資を受けにくい傾向もあります。
Women’s Startup Labでは、こうした意識と課題を理解し「多様な視点とイノベーションこそがスタートアップの新しい原動力」だと理解する、アドバイザーやキーパーソンと出会えるプログラムを提供している。
名高いベンチャーキャピタル「グレイロック」のパートナーであり、リンクドインの共同創立者でもあるリード・ホフマンや、エバーノート創立者のフィル・リービン、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏などもサポートパーソンである。
リード・ホフマン/Getty Images
シリコンバレーのモデルを日本にコピペするな
堀江は、日本においても「“未来をつくる”という分野の、スタートアップに女性の活躍推進は不可欠です」と話す。
ただ、日本のVCは91%が男性。「実は、シリコンバレーでも男性ベンチャーキャピタルさんが93%も占めています。何でも“最先端”と思われがちなシリコンバレーですが、ダイバーシティの観点では躓いてきた歴史があり、その多くの可能性を逃してきたモデルを、単に日本に“コピペ”してはいけません」と警鐘を鳴らす。
コロナ禍では国も企業も“イノベーション”を掲げているが、新しいモノを生み出す際に女性にリーダーシップをとらせ、彼女たちの視点をスピーディーに反映させていく環境が重要だ。
「女性は男性より10倍の単語とコミュニケーション能力をもち、情報を集め処理しているといわれます。そういった意味でも、彼女たちのアイディアはより意見を集め、社会の声を反映させられるキャパを持ち洗練されていくのです」
実際に消費力の80%を女性が握っているにもかかわらず、トップの決断メンバーは男性ばかり。
「“女性の視点を入れているよ”という企業は多いのですが、実際には彼女たちがリーダーシップのポジションにいないんです。そのことで、多くの提案が男性化レベルまで落ちてしまって面白くないものになったり、男性の体験からして想像力と理解に及ばず、説明する時点でワクワクが終わっているケースも多くあります。起業時も『男性投資家に話をして?』状態なんです」
男性化した社会の中で意識なくシリコンバレーのコピペを繰り返せば、女性リーダーに権力のバトンタッチがなく、女性起業家へのファイナンシャルパワーも男性より一桁低い状態が続く。それでは日本のイノベーションの可能性が潰れ、大きなズレや無駄ができるばかりだ。
「大きなチャンスが今後まだまだこれからあるということですよね」(堀江)