ビジネス

2021.09.28

アマゾンが実店舗のデパート業に参入、小売業界をどう変えるか

ワシントン州シアトルのAmazon.com Inc.本社にあるAmazon Goストア(Photo by David Ryder/Getty Images)


小売業界は、臨機応変な対応で幅広い消費者層をとらえるサービスを導入してきた。アマゾンプライムなどのメンバーシッププログラムや、無料かつ迅速な配送サービスは、小売業界に広く定着した。それでもアマゾンが市場を支配し続けられるのは、購入商品をすぐに消費者の元に届けられるからだけではない。より重要なのは、予測分析を用いて、消費者が何を買いたがっているかを正確に把握することに長けている点だ。どうやら、消費者自身が自覚するより前に、アマゾンは知っているようだ。

デジタルとデータを最優先に考える企業であるアマゾンは、実店舗に革新をもたらし、そのあり方を今後も変えていくだろう。

消費者は実店舗が好きだ。彼らは商品に触れ、感じ、相互作用する経験を欲している。たとえ次回のオンラインショッピングを念頭に、下調べや見学のために店舗を利用しているとしても。

デジタルファーストというマインドセットは、アマゾンの店舗を、競合他社の店舗と差別化する鍵になるだろう。一番のお得意様になる可能性が高いのは誰か(アマゾンプライムの会員だ)、彼らがどこに住んでいるか、過去にどんな注文をしているか、さらにはストリーミング視聴した映画や音楽まで知ったうえで、アマゾンは実店舗をオープンする。多くの小売店には想像もつかないほど、アマゾンは顧客を熟知しているのだ。

アマゾンは、究極の「顧客の声」データセットを多数保持している。このデータを自在に駆使して、より多くの商品を販売できる。このような好循環が、実店舗でどのように作用するだろうか? アマゾンは、顧客との対面でのやり取りを通じて、さらにどれだけのデータを獲得するのだろう? アマゾンは、高度にパーソナライズされデジタル化された、ユニークな店舗体験を創造するチャンスを手にしている。

だが、これは業界全体の転機になるのだろうか?

アマゾンは、実店舗展開を戦略的に拡大し、競合他社と差別化できるユニークな体験として提供できるだろうか。それとも、他の多くの企業と同じように、判で押したような似たり寄ったりの店舗を量産する過ちを犯すのだろうか。

一方、アマゾンの競合他社はどこも、様子を見てから対応を決めていたのでは、手遅れになるだろう。さまざまなアプローチや製品をテストし、学び、柔軟に対応していく必要がある。何をどうすれば自社を差別化でき、特別な関係を維持できるのか、顧客の声を聞かなくてはならない。

顧客の声という方法で収集したデータを予測分析に活用することは、オンラインと実店舗を問わず、小売の未来にとって不可欠だ。小売企業は、クラス最高のパートナーを見つけ、これまでにないレベルで、テストや解釈、対応を重ねていく必要がある。自社が存続できるかどうかは、それにかかっているのだから。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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