米国の「反マスク派」に男性が多いのはなぜか、研究結果から考察

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新型コロナウイルスのパンデミックが発生してから1年以上がたつ中、米国ではいまだに多くの人が、マスクの着用をちゅうちょしている。そして、病気のまん延を防ぐものとして数千年前から使われてきたマスクは、性差を表わす文化戦争の象徴になっている。

こうしたことが起きるのは、なぜなのだろうか──。パンデミックが起きる以前から、男性の間には病気になることを弱さと捉える考え方があった。ニューヨーク・マウントサイナイ眼科耳科病院のスコット・ゴットリーブ医師は、「自分は無敵だという感覚を持つ人、自分が健康に深刻な問題を抱えるようになりうるとは考えられない人もいるだろう」と指摘している。

こうした考え方をする男性は、健康に関してより危険な行動に出る可能性がある。例えば、ビンジ・ドリンク(数時間のうちに大量の酒を飲むこと)をする人は、女性より男性の方が多い。また、治療が不可欠なときでさえ、診察を受けるのを嫌がる人が多いのも男性だ。

健康・社会行動に関するジャーナル、Journal of Health and Social Behaviorに2011年に発表された研究結果でも、「“男らしさ”の理想は、無敵であるとの感覚を持つこと、助けを求めることに抵抗感を持つことと関連付けられている場合が多い」と説明されている。

固定観念がリスク要因に


こうした伝統的なジェンダー規範は、予防衛生を軽視する、危険な行動を取るという2つの形で、男性の健康に影響を及ぼしている。この研究結果が発表されてから10年後、新型コロナウイルス感染症が流行する現在も、男性の中にはこれと同じ影響を受けている人たちがいる。

統計から、「ワクチン接種、マスク着用、手洗い」を避ける、または拒否する人は、男性に多いとみられている。また、こうした行動を取る男性は、「握手する・人の体に触れる、不要不急の外出をする、大勢が集まる場所に行く」といった感染の危険性が高まる行動を取りやすい傾向があると考えられる。

「男らしさ」に関するこの固定観念が、男性たちの健康を危険にさらしている。米疾病対策センター(CDC)のデータからみても、新型コロナウイルス感染症による死者は、女性より男性の方が多い。
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編集=木内涼子

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