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2021.08.24

戦いは、フェイスブックから暗号通貨へ。帰ってきた「ザッカーバーグの敵」

Alli Harvey/Getty Images for Spotify


NTFアート市場は爆発的な成長を見せている。ニフティ・ゲートウェイは今年2月、大手オンラインプラットフォーム7社で落札された9100万ドルのNFTアート作品のうち7500万ドル分を扱い、3月末には、収集家たちが購入した総額1億8800万ドルのNFTアート作品のうち、1億3200万ドル分を販売した。

この大ブームで、ビープル_クラップことマイク・ウィンクルマンほど大金を稼いだNFTアーティストはいない。ビープルは、10年以上も趣味で毎日1枚のデジタル画像を制作し、インスタグラムなどで公開していたが、カルトな人気は得ていたものの、収益化はできずにいた。マウスを右クリックするだけで簡単にコピーされてしまうからだ。

昨秋、ニフティ・ゲートウェイはアーティストに声をかけ始めた。厳選された作品を扱う新しいプラットフォームに、インスタグラムのフォロワー数が100万人を数えるビープルが選ばれたのは当然のことだった。ビープルがトランプ前大統領を描いたNFT作品「クロスロード」は昨年10月31日、ニフティ・ゲートウェイでいちばん人気の作品となり、6万6666.66ドルで売却された。落札者は作品をニフティ・ゲートウェイで再び売りに出し、今年2月に660万ドルで売却、90倍の利益を上げた。ニフティ・ゲートウェイでは二次市場での転売でアーティストが10%の印税を受け取るため、ビープル本人も約66万ドルを稼いだ。

「いまでは、5分で400万ドルの取引が行われます」

とキャメロン。1年前なら好調な日でも1日の取引高は5万ドルだったのだ。タイラーも言う。

「要するに、アート界全体、エンターテインメント界全体が、扉を蹴破ったんです」

ウィンクルバイは最終的に、ジェミナイとニフティ・ゲートウェイという2つの取引市場をひとつのダッシュボードとして統合し、NFTが融資の担保として使われるようにしたいと考えている。そうなれば、保有者はデジタル資産を売却することなく活用し、資金を得られる。2人は、ユーザーの身元確認のために行う審査をNFTとして発行できる未来も思い描いている。フェイスブックを思い浮かべればいい。ただし、疑う余地もないほど厳密に身元確認が行われたフェイスブックだ。

ウィンクルバイにとってのもう一つの大きな投資分野は、分散化を支えるブロックチェーンベースのアプリケーションだ。つまり、ユーザーによってウェブサービスやアプリケーションが開発・運用・統治されるため、グーグルやフェイスブック、マイクロソフトなどのテック企業が不要になるという発想だ。

14年、ウィンクルボス・キャピタルはサンフランシスコのオープンソース開発企業「プロトコル・ラボス」と手を組み、シードラウンドに出資した。

同社の取り組みのひとつに、「ファイルコイン」がある。これはコンピュータストレージのネットワークを構築するというもので、世界中のユーザーがハードディスクの使用していないスペースを貸し出し、引き換えにイーサリアムのブロックチェーンに基づくファイルコインというトークンで報酬を受け取る仕組みだ。すでに25万台のコンピュータが参加している。ファイルコインは絶好調で、そのトークンは今年に入って350%高と急騰。同社の時価総額は60億ドルを超えている。
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文=マイケル・デル・カスティージョ / スーザン・アダムズ / アントワーヌ・ガラ 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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