(前回の記事:難削材にも高精度で挑む 前人未到の由紀精密に、何が「物足りない」のか )
クリエイティブスタジオ「Whatever」のCCO川村真司とともに、ものづくり企業が抱える課題に新たなアプローチでアイデアを考える集中連載「Creative Ideation for R&D」の2回目。今回は、ヒアリングを通じて見えてきた課題を精査し、アイデア出しの方向性をまとめていく。
組織において大胆な発想のアイデアが求められていたとしても、実は根底にはブレない共通認識が必要だ。Whateverは、由紀精密の強みをどのように引き出していくのだろうか──。
「クリエイティブ・ブリーフ」が重要な理由
由紀精密社長の永松純が、前回のヒアリングを元にWhateverが作成したクリエイティブ・ブリーフの資料に目を落とすと「すごいですね。細かいところまで言い当てられている」と声をもらした。その資料には、事業や強み、課題、対象、目的、企画のイメージなどがまとめられている。前回、1時間半でヒアリングが進められたが、彼らが感じていた課題感が、的確に言語化されていた。
ヒアリングをもとに、Whateverが作成したクリエイティブ・ブリーフの資料
その「クリエイティブ・ブリーフ」を詳しく見ていく前に、前回のヒアリング後に交わされた会話を振り返りたい。川村が「精密な技術を見せて話題化するためのブランド・コンテンツについて、商品やプロダクト寄りのものからプロモーション的な企画まで、グラデーションをつけてアイデアを持ち寄れたらと思っています」と語りかけた。ものづくり企業としてR&D化を視野に入れるが、まずは幅広くアイデア出しをすることになった。
すると、永松が「ものづくりで価値を生み出すことを常に考えていますが、もうちょっとラフに考えてもいいのかなとも思います。由紀精密のミッションは『ものづくりで世界を幸せに』なんです」と語り始めた。「例えば、実際にものを作らなくても、誰かがそこらへんにあるモノの背景に興味を持って、写真を撮ったらどのように作られたか誰かが答えてくれる、そんなコミュニケーションツールがあったら面白いですね。今回の企画では、ものづくりから派生する面白さも出てくるといいなと思っています」。
これに対して、川村が「直接的に由紀精密の技術を駆使したプロダクトではないけれど、その強みを活かしたサービスやコンテンツを展開していくのもありそうですね。アイデアの幅を出せるように、ブリーフをまとめてみます」と応じていた。